「いたたまれない気持ち」に…撮影初日、菅田将暉から学んだこと
――豊田さんが「憧れの役者」として挙げている役所広司さん、菅田将暉さんらとの共演です。撮影現場はいかがでしたか?
すごく緊張しましたが、みなさんが集中している雰囲気が、なんだか心地よく感じました。
僕はまだ“お芝居のあり方”みたいなものも、よくわかっていませんが、この現場で、皆さんから本当にいろいろなことを教えていただきました。
憧れの役者さんが目の前でお芝居をしていることも、皆さんと一緒に「この映画は、どうなっていくんだろう」とワクワクしながら作品をつくっていくことも、僕にとっては、すべてが“奇跡の連続”のような体験でした。
――撮影で、印象的なエピソードがあれば教えてください。
特に心に残っているのは、役所さんが「段取りでもテストでも、心が動いたならそれでいいんだよ」と、おっしゃっていたことです。毎回、本番ですべてを出せるのがベストだとは思いますが、まずは自分の心が動くことが大事、ということをお話ししてくださって、自分のなかで大切にしています。
菅田さんは、たたずまいもそうですが、とにかく感情が伝わってくる目というか、お芝居のその先を見ているような目をされていて、すごいなと思いました。
役所さんや菅田さんのお芝居を見て、「現場で起こっている出来事が正解で、本物」なのかな、とか思いました。机の上で書いて想像するより、実際に湧き起こる感情のほうが、何倍もの価値があるというか、大切なのかもしれないと感じました。
――そこで得た経験が、ほかの現場でも活きていると感じる部分はありますか?
もう、たくさんあります。今回の撮影初日に、僕が役所さん演じる政次郎をつかんで止める、というシーンがあったんですが、段取りのときに、僕がはずみでぶつかって小道具が壊れてしまったんです。
撮影を中断して、整えてから再開することになったんですが、撮影初日、大先輩の方々がいるなかで、芝居のこともよくわかってない新人が小道具を壊して現場を止めたという…。
もう、いたたまれない気持ちになって、1人ひとりに謝りました。そのときに、菅田さんが「もう忘れた。大丈夫だから、次に切り替えて」ということを言ってくださって。落ち込むのでなく、早く切り替えて次に活かす強さが必要だということを、学ばせていただきました。
それからは、「自分は、まだまだだな」と思うことがあっても、とにかく食らいついていこうという気持ちになれています。