<伊藤歩 コメント>

南条不二子(伊藤歩)

不二子を演じるにあたって、作品の中で細かく描かれていない部分――彼女の生い立ちや性格、そして置かれてきた環境などをできるだけ集めるようにしました。それがセリフとして、あるいは演じるうえで直接的な表現につながらなくてもいいという気持ちで、そういう積み重ねるやり方でキャラクターを作っていったんです。

不二子は、ポーカーフェイスでいることが多く、物語の序盤はほとんど感情を見せない人物でした。本当は、感情があるのに、それをうまく出せない。人間らしさが表れてくるまでの感情のグラデーションに気を配っています。

伊藤歩という一人の人間として、自分のこれまでの人生を少し振り返りながら、子どものころはどんな感情で、どんなふうに生きていたのかを考えました。最終話で不二子の過去が少し描かれるのですが、もし自分が不二子と同じような家庭環境で育っていたらどうなっていただろうか。

さまざまなシミュレーションを重ねながら、彼女との距離感を少しずつ図っていきました。幼少期から親元を離れるまでの彼女の生い立ちが、彼女の人物像に大きな影響を与えているんです。その部分は一番大切にしましたし、視聴者のみなさまに見て感じてほしい部分でもあります。

ロンと同じように、不二子もまた、母とのつながりを手放せずに生きている人物なんです。

母と子の関係は簡単に割り切れるものではありません。身内が母親しかいない彼女にとって、その関係を何とかしたいという思いは強かったはずです。うまく噛み合わない関係性も含めて、これは特別な話ではなく、誰にでも起こり得るものだと感じました。良くも悪くも、最後まで強く残ったのは「母親」という存在の大きさでした。

左から)幼少期の龍一(田村奏多)、南条不二子(伊藤歩)

似ていない部分でいえば、私は詐欺師にはならなかった(笑)。

俳優という仕事も、ある意味では詐欺師に近い部分があるのかもしれませんが(笑)。

でも、それもやっぱり「縁」なのかなと感じるんです。原作では、彼女をその世界に引き入れる人物がいるんですよね。そういう人と出会う人生と、出会わない人生があります。同じ状況が目の前にあったとしても、何を選ぶかは人それぞれ。その些細な選択の積み重ねが、大きな違いにつながっていくんだなと思います。

俳優として30年以上活動してきましたが、この世界は本当に一期一会だと感じます。同じスタッフさんやキャストさんが再びそろうことは少なく、再共演の機会も意外と多くはありません。その一方で、何度もご一緒する方もいます。

一つひとつの出会いを大切にしたいと思っています。現場では、ただ楽しいだけでなく、彩りや温かさのある時間になるよう心がけていて、結局いちばん大切なのは誠実に人と向き合うことだと感じています。

ロンくんは母親との関係だけでなく、さまざまなものを抱えながら生きてきた人物です。第1話から最終話までを通して、周囲を助けながらも自分自身をあと回しにしてきた姿が描かれ、最終話ではついに自分の弱さと向き合うことになります。

他人を救うほどに、自分の心の闇や罪悪感に向き合わされていく姿はとても切なく、そこが大き
な見どころです。最終話では精神的にも追い詰められていくなかでの葛藤や成長、前へ進もうとする姿に注目してほしいと思います。

左から)菊地妃奈子(平祐奈)、小柳龍一(大西流星)