北山宏光さんが6年ぶりとなる主演舞台への意気込み、黒澤明監督&三船敏郎さんの名作に挑む心境を語りました。

2023年、TOBEからソロデビューを果たし、アーティスト活動のみならず楽曲制作やライブ演出、俳優業など、幅広く活躍している北山さん。このたび、『醉いどれ天使』で6年ぶりの主演舞台に挑みます。

名匠・黒澤監督と三船さんが初めてタッグを組んだ映画『醉いどれ天使』(1948年)。同年に舞台作品として上演されるも、その台本は長らく眠っており、近年、偶然発見されたことで、2021年に再び舞台化されました。

今回、新たなスタッフ・キャストにより2025年版を上演。戦後の混沌とした時代に闇市を支配する若いやくざ・松永を北山さんが、松永と対峙する酒好きで毒舌な貧乏医師・真田を渡辺大さんが演じます。

主演を務める北山さんに、本作の印象や松永をどう演じるか、映画公開から約80年を経た現在に通じるもの、などについて聞きました(前後編の前編)。

北山宏光“舞台1年目”の感覚で名作に挑む

――6年ぶりの主演舞台、意気込みを聞かせてください。

もう6年も経ったんだ、という感じです。コロナ禍があって、エンタメ自体がいろいろ変化して、僕自身の環境も変わって。だから、6年ぶりというより“1年目”みたいな感覚です。初めて舞台に立つような気持ちで取り組もうと思います。

僕は、舞台やライブなど、生物(なまもの)と呼ばれるものがとても好きですし、コロナ禍を経て、ステージに立てることの尊さを改めて感じました。だからこうして、みなさんの前で芝居ができることに対して、数値で表せない価値のようなものを感じています。観に来てくださるお客さんに何を届けられるか、今からワクワクしています。

――出演が決まった際はどんなことを感じましたか?

黒澤監督をはじめ素晴らしいみなさんが紡ぎ、そして今回、僕が松永を演じる。歴史ある作品を背負う責任、プレッシャーはもちろんありますが、この時代だからこそ、できることもあると思いますし、僕が演じることによってまた違う見え方にできるかもしれません。

戦後の荒々しくも繊細な人間模様を、令和に落とし込んだらどうなるのか、このカンパニーでどう“料理”していくか、という楽しみのほうが大きいです。今の時代に松永を演じられる嬉しさ、観た人がどう受け取ってくれるかというワクワク感もあります。