松村さんは「僕自身、まだ本編を1回しか観ていないので、今日、皆さんと観るこの状況で2回目です。そして、この大きなスクリーンでこんなにもたくさんの人と一緒に観るというのは、きっと人生で唯一の日になると思います。チンチャ カムサハムニダ(本当にありがとうございます)」と韓国語を交えて観客に呼びかけました。

松村北斗「椅子です(笑)」と自己紹介!出演の決め手は…

現在の心境を聞かれた奥山監督は「松村北斗という素晴らしい俳優に出会えて、一緒に『秒速5センチメートル』を作ってきたスタッフやキャストに、そして、原作の新海誠さんに心から感謝したい」と熱くメッセージ。

主人公を演じようと決意したきっかけを問われた松村さんは、「もともと僕は原作アニメーションのファンだったというのが一つの理由。そして、新海誠監督の『すずめの戸締まり』という作品で、椅子の役をやったんですね。あ、改めまして“椅子”です」と名乗ると、場内からは温かい笑いが。

続けて、「新海さんとの信頼関係があったというのも理由の一つ。でも、この二つだけではチャレンジするのはあまりにもハードルが高く、難しい作品。そして、役柄でした。しかし、奥山監督から、すでに始めている実写版プロジェクトへの熱意を聞いていくと、僕ひとりが不安に思っていたとしても、そんなことは関係ないくらい、ものすごいセンスと熱量で準備されていて、この方がリーダーになって進んでいく作品に乗っからないほど人生で惜しいことはないとその場で強く思いました」。

そして、「この役に挑戦したいという気持ちがほぼ決まってから監督とお会いしたのですが、『今すぐ撮りましょう』といいたくなるくらいの説得力をいただいて、それが最終的にこの作品に飛び込むことを決めさせてくれた出来事でした」と経緯を丁寧に説明しました。

また、「貴樹を演じるうえで大事にしたことは?」という質問に、「特に難しかったのは、自分が原作の大ファンであり、遠野貴樹というキャラクターやこの物語に憧れていたので、この強い憧れから生まれるドキドキのまま飛び込むと、この世界を楽しむ自分になってしまって、生きることの難しさに苦しむ主人公とはかけ離れてしまうこと。憧れることを一切やめて、離れたところで遠野貴樹という人物を見つめ直すことがすごく難しかった」と回想。

続けて、「僕と青木くん、上田くんの3人で遠野貴樹という一つの役を演じています。これをとても難しく思っていたのですが、僕よりも早くに撮影をしていた彼らのパートの映像を見たら、本当に素晴らしい俳優たちでした。彼らが役としての軸をぶらさずにもっていて、それを引き継いだことで演じる難しさがなくなり、とても頼もしくて、役として肉厚になるきっかけになりました」と切々と振り返りました。

上映終了後、エンドロールが始まると、会場は盛大な拍手に包まれ、終了後に松村さんと奥山監督は固い握手を交わし、熱いハグを。そして、何度も観客にお辞儀をし、手を振りながら感謝を表しました。

オープンシネマ部門の上映を終え、松村さんは「今は放心状態。あれだけのお客さまと一緒に作品を観たことで、自分も一観客として初めて作品を観られたような感覚があって、一体感というか、みんなでグーッと作品の世界に集中して入っていく感覚を肌身で味わいました。貴重な経験をさせてもらえました」と感無量といった様子。

奥山監督は「スクリーンの大きさや会場の熱気もあってか、こんなにのめり込んで観られる状況がすごく幸せでした。この映画を制作するうえで関わったすべての人を代表して、自分がここにいさせてもらえることのありがたさや、改めて一緒に作った人たちへの感謝を感じて、この感動を早くみんなに伝えたいなと思いました」と達成感をにじませました。