痛々しさのその奥が見える…ちゃんと“人情”に持っていける…

やったね!いづみ!!からの、ハルコの人脈を駆使しまくった“シングルマザーの苦悩”の華麗なる解決で一件落着…なはずなんだけど、ここまでであと残り10分…。

え?もう、オチまでいって終わったっぽいのに、こっからなにやるの?と思ったそこからの、まさかまさかのランと龍くんの恋愛模様を、“いづみによって”感動のフィニッシュをみせる展開になろうとは!!

正直な話、今回の『中島ハルコ』において、ランと龍くんのBL要素、いるかね?って思ってたんですよね。

いくらタイが舞台になってて、タイが性的マイノリティに寛容な国…とはいっても、それを急に『中島ハルコ』の中に取り入れるのは、なんかちょっとそれをネタとして扱ってる感があるというか、日本ドラマの昨今のBL作品の潮流に安易にのっかってるっていうか(いろいろ失礼)。

そもそも、この作品のテンションにはそぐわないというか、地元密着モノ申す系ドラマの『中島ハルコ』(そもそもタイの時点で地元密着ではないんだけど)とは、親和性はないと思っていたのに(そうはいっても、あの二人の関係性にはドッキドキで見てたわけなんだけど…)。

まさか、第1シーズンから、空気のように扱われてきた、“いづみの悲哀”でもって、好き同士であることの奇跡…しかも、同性同士で好き同士でいられる奇跡を、表してみせる…今回の“いづみのパシリ体質”~“シングルマザーの苦悩”~“いづみの哀しき恋愛遍歴”と、転じていったその先に、ランと龍くんの愛の奇跡へもっていくという、この説得力と美しさよ!!!

で、普通、どうしたって「あたしは40歳になっても結婚できてない。でも、結婚したいの」っていう、そんないづみみたいなキャラクターってのは、もう痛々しくて説得力どころの話じゃない、生々しさでしかないんだけど、この松本まりかさんが演じるいづみが秀逸過ぎて、生々しさはなくはないんだけど、キュートが“ちょっと”だけ上回ってる…。

その“ちょっと”が重要で、キュートが上回りすぎると、視聴者はそうはいっても、あんた、かわいいんだから、モテるんでしょう?縁がないだけ!逆に嫌味!!になるはず。

だけど、いづみには生々しさと比較して “ちょっと”だけ、キュートが上回るくらいだから、かわいそうではあるんだけど、ちゃんと笑える隙(すき)も残っていて。とはいえ、その中にちゃんと“悲哀”も残されてるもんだから、ラストの“恋愛遍歴”をとうとうと語るシーンも、痛々しさのその奥が見える…ちゃんと“人情”に持っていける…だから、しっかり“泣ける話”に着地できるんですよね。

でもって、結局最後は「あたし、どうすればいいんですかね?(=どうすれば結婚できるのか?)」っておどけちゃう、あのキュートさな!!

この時代に、結婚結婚って、結婚至上主義の、価値観の押しつけにもなりかねないのに、こといづみの結婚観に関しては、妙に一貫してて、異常にその願望が強すぎるもんだから、それが逆に彼女の個性になってて、しかもちゃんとキュートへと昇華されている…。

この第3シリーズ中盤まで、ひたすら『中島ハルコ』のキャラクターと物語の独自性ばかりに注目してきたけど、いづみもいづみで、ここまでしっかりとキャラクターが醸成してきたからこそ、今のいづみ…魅力が深みを増してきたいづみ…ってことなんですね。

でもでも、これからも、いづみはパシリでいてほしいし、恋愛はずっと難儀でいてほしい(ひどい視聴者)!!!