「自分だけではなかった」家族会との出会い
家族会代表の黒井秋夫さん(78)も、戦地より戻ってから約40年間、家族が貧困にあえぐなかで定職につかないでいる、元陸軍兵の父親を「でくのぼう」と軽蔑して育ちました。
しかし父の死後、遺品から満州で「匪賊(ひぞく)討伐」に従事していたことを知ります。
日本軍に抵抗する中国兵らを「匪賊」と呼んで攻め討っていたのです。同じ時期、同じ部隊にいた元兵士の手記には、人を殺すことを強いられ「人間の皮をかぶった獣に変わった」と記されていました。
戦争は、人の心をどう変えるのか。精神科医は、戦場で受けた強烈なトラウマは、生涯消えることはないと指摘します。
しかし、日本では兵士の心の傷が長く「個人の弱さ」とされ、十分に顧みられないまま、その苦しみは家庭に委ねられてきました。
藤岡さんは今、封印してきた記憶を書き残し、公の場で語り始めています。そして、父が戦場で何を経験したのかを知ろうと、軍歴を取り寄せました。
20歳で海軍に召集された父は、千島列島の松輪島を経て、終戦後はシベリアに3年間抑留されていました。
藤岡さんは、その足跡をたどります。憎しみしかなかった父に、少しずつ別の感情が芽生え…。
戦争は、戦場だけで終わるのではありません。兵士が負った心の傷は、家庭に持ち込まれ、ときに子どもたちの人生をも変えます。
戦後81年。父が連れて帰った戦争と向き合い続ける、一人の娘と家族たちの姿を追います。
本作の竹下洋平ディレクターは、入社11年目の報道記者。初めて担当したドキュメンタリー『ザ・ドキュメント 出口なき部屋~介護離職 救いはどこに~』(2025年5月放送)で第34回FNSドキュメンタリー大賞・特別賞を受賞しています。
入社以来、戦争報道をテーマの一つとして取材を続け、『newsランナー』(毎週月曜~金曜16時50分~関西ローカル)で、約4年前から毎年戦争に関する特集を企画。
世界各地で講演活動を続ける被爆者の特集などを通じて、戦争の悲惨さ、平和への願いを伝える声を拾い上げてきました。
竹下ディレクターが藤岡さんの取材を始めたのは、約2年前に「PTSDの日本兵家族会」の証言集会を目にしたことがきっかけ。
戦争を体験した世代が亡くなり、戦争の記憶が薄れていくことに危機感を抱くなかで、藤岡さんのように、戦争体験者の“次の世代”が戦争のもたらす影響に声を上げています。
そのことに意味を感じ、戦後81年でようやく国の施設で心に傷を負った兵士に関する展示がはじまった今だからこそ伝えたい、と取材を重ねてきました。
『ザ・ドキュメント 父は戦争を連れて帰った』(関西ローカル)は、8月28日(金)25時15分より、カンテレで放送されます。
