「この葉っぱ、浮き上がってるの?」と思わず、絵に近づいてしまった立体的な作品、ワイエスの妻・ベッツィの姿が窓越しに見える作品も紹介します。

光と影の視覚効果が堪能できる傑作が多数

シーツがふんわり
《洗濯物》(1961年)

ほかにも、ワイエスの“光と影”と“風”のコンビネーション描写に唸った作品がありました。まずは《洗濯物》。日差しを浴びたシーツがふんわりとはためいています。右手から風が吹いているのでしょう。ズボンも同じ方向に揺らいでいます。

網かごの隙間を見て!

そして、白いシーツと暗めのバック、草むらに置かれた網かごを照らし出す陽光と影が、お互いを引き立てていますが、何より、網の隙間から漏れる光の濃淡で、かごの内側が輝いて見えるのがすごいですね。

建物は自宅の母屋で、開かれた窓は夫婦の寝室の窓だそう
《花びら》(1991年)

ひらひらと花びらの舞い落ちる様子を描いたのが《花びら》。背景がダークな家屋のため、白い花びらの落下がより鮮明な視覚効果となって表現されているのでしょうか。

立体作品?
《薄氷》(1969年)

そして、《薄氷》を見たときには「この葉っぱ、浮き上がってるの?」と思わず、絵に近づいてしまいました。たくさんの枯れ葉が薄い氷の張った水に沈んでいるのですが、沈み切らなかった一枚に光があたり、立体的に見えるのです。

光と影の効果で浮いて見えます

ワイエスは「沈んだたくさんの葉は、自分が重ねた経験や出会った人々を表している」と説明していますが、実は、この作品を描いた前の年にクリスティーナが亡くなっていて、生と死を意識した作品でもあるそうです。

タイトルは《灯台》(1983年)でも主役はワンちゃん!

閑話休題的に惹かれたのは《灯台》。筆者のなかでは、この絵の主人公は白いふさふさの毛のワンちゃんです。ステイしてじっと見つめられているような気がして、おやつを探したい気持ちになりました。

ワンチャンの正体はワイエスの妻・ベッツィの愛犬
窓という「境界」で“中”と“外”を表現
《ヒトデ》(1986年)

ところで、この展覧会は「境界」をキーワードにしています。わかりやすいのが部屋の中と外を隔てる窓をモチーフとした作品です。まずは、双眼鏡を覗く妻・ベッツィの姿が窓越しに見える《ヒトデ》。

窓の外に潮風の匂いすら感じる、光と風を感じる作品です。そして窓がダブルに描かれているのが《ゼラニウム》。手前の窓から、向こうの窓の外の景色まで見通せます。

奥にも窓があることでこの部屋が閉ざされた世界でないと表現
《ゼラニウム》(1960年)

場所はオルソン家の台所で、部屋の中に見える花がクリスティーナお気に入りのゼラニウムであることから、中にいる人影も彼女、ということが暗示されているそうです。深いですね。

部屋の中にはクリスティーナ

今回の観覧でちょっとお楽しみなのが、来場者のみなさんが“窓”を感じられる仕掛け。会場に窓枠が作られていて、手前に立てば、その向こうに窓をテーマにした作品が見え、反対側に回ると窓から差し込む光線を感じられます。

会場内の窓から見る《ヒトデ》
窓の効果を体感できます