吉瀬美智子さんが、生活の中でのアートの楽しみ方と、こだわっていることを語りました。
東京都美術館で開催中の『アンドリュー・ワイエス展』は、20世紀アメリカ具象絵画を代表する画家アンドリュー・ワイエス(1917-2009)の没後、日本初となる待望の回顧展です。
日本初公開となる作品も10点以上含まれる本展では、ワイエスが好んで描いた窓や扉などの「境界」を表すモチーフに着目し、生と死、精神世界と外の世界をつなぐものとして作品を読み直します。
本展で初の音声ガイドを担当し、「見えないところに強いこだわりや思いがある」とワイエスへの共感を語る吉瀬美智子さんに、ワイエスの魅力や好きな作品、日常でのアートの楽しみ方を聞きました。
吉瀬美智子「悲しみと同時に生きる強さを感じる」ワイエス作品の魅力
――音声ガイド収録の感想を聞かせてください。
展覧会の音声ガイドに憧れていたので、お話をいただき光栄でした。ワイエスの作品解説には難しい表現が多く、普段使わない言葉や表現があったので、何度か噛んでしまいました(笑)。慣れるまで緊張しましたが、進めていくうちにスムーズになり楽しくできました。
――特に意識したポイントはありますか?
自分の感情を入れすぎると作品を邪魔する気がしたので、感情的になり過ぎず、フラットにもなりすぎないようバランスを取りました。BGMのように自然に聞こえていたらうれしいです。スタッフさんからは「良かった」と言っていただけたので、ほっとしています(笑)。
まだ自分のナレーションを確認できていないので、会場で聞くのを楽しみにしています。子ども時代に留守番電話に自分の声を入れて、「なんか声が違うな」と確認したときのような恥ずかしさもあり、うれしい気持ちもあります(笑)。
――気になった作品を教えてください。
生と死を意識する作品に惹かれます。特に『薄氷』(1969年/親交のあったクリスティーナ・オルソンが亡くなった翌冬、彼女の思い出に捧げられたテンペラ画)は、氷の下に葉が沈んでいる描写の表現がとても気になり、作品の前でずっと立って見ていたい気持ちになりました。
知人や亡くなった方々、自身の経験を枯葉に見立てて何枚も重ね、その上に水と氷、気泡が見える。死だけでなく、生の部分も同時に描かれているようで非常に惹かれました。『薄氷』には悲しみと同時に生きる強さを感じます。
また、表面に見えるものだけでなく、見えないところに強いこだわりや思いがある点にも共感します。ワイエスは窓や扉、内と外の世界を描き分けるので、「なぜここを切り取ったのだろう」「どうして寂しそうに見えるのだろう」と自然に疑問が湧きます。
その問いに対する答えを知ると、絵の意味をもっと知りたくなります。知れば知るほど奥が深いワイエスの世界観を、音声ガイドで補えるので、ぜひ私の声を通して「もっと知りたい」と思ってもらえたらうれしいです。
――生活の中で、アートを楽しむ機会はありますか?
以前、ルーブル美術館に行ったときに、教科書で見た画家たちの作品に感動したことをよく覚えています。子どもが生まれてからは美術館に行く機会は減りましたが、上の子が12歳になり一緒に行けるようになってきたので、山梨県の『中村キース・へリング美術館』に行きました。そういった子どもと楽しめるポップな展覧会や、 teamLab(チームラボ)などの体験型ミュージアムに行くこともあります。
私はインドア派で家にいることが多く、インテリアにこだわっていることもあり、日常生活にアートを取り入れて楽しんでいます。ジャパニーズモダン、特に和紙のアートが好きなので、佐賀の手すき和紙作品などを家に飾っています。
最近も衝動買いで大・小と合わせて3点購入しました。和紙の作品は空気のように存在して寄り添い、気になったときに向き合える、まるで猫のように感じるところが好きです。
