「古い街並みが残っている」と、日本人ばかりか、海外の人たちからも注目されている東京・谷中にある「SCAI THE BATHHOUSE」(スカイザバスハウス)。

ここは200年の歴史を持つ由緒ある銭湯「柏湯」を改装したギャラリースペースで、外観は日本家屋そのものです。

ギャラリーは元銭湯。瓦屋根が目を引きます

ストライプを用いた独自の表現で知られるフランス人アーティスト

ガラスの扉を入ると、銭湯だった名残を感じさせる靴箱がオブジェとしてそのまま残されています。古き良き時代のアートといったところでしょうか。

銭湯の靴箱はそのまま残されています

このギャラリーは現代アートに特化していて、現在は、ダニエル・ビュレン『Third Eye, situated works - 知覚の拡張—そこにある眼差し』が開催中(~5月16日)です。

天井が高く開放的な空間

ダニエル・ビュレンさんは、ストライプを用いた独自の表現で知られるフランス人アーティストで、パリ市内のパブリックアート、パレ・ロワイヤル中庭にある《Les Deux Plateaux(二つの台地)》が有名です。

《二つの台地》(撮影協力:鎌田慎也さん)

歴史を感じる建物の中に、高さの異なる白と黒のストライプの円柱が碁盤の目のように点在していて(その数なんと260本!)、「ビュレンの円柱(Colonnes de Buren)」と呼ばれフォトスポットとしても親しまれています。

《二つの台地》(撮影協力:鎌田慎也さん)
《二つの台地》(撮影協力:鎌田慎也さん)

「視覚の道具」の真価は、ストライプが鏡面に映り込んだ瞬間に出現

今回、谷中の展覧会で披露されているのは、ビュレンさんの《Prismes et miroirs : Haut-relief (プリズムと鏡:高浮き彫り)》という新作のシリーズです。丸い鏡面のベースに色とりどりの直角三角形の立体パーツが浮き彫りになっています。

象徴的なストライプは、その直角三角形の側面に施されているだけなのですが、ビュレンさんがこれを 「視覚の道具」と呼ぶ真価は、そのストライプが、鏡面に映り込んだ瞬間に現れます。シャープな縦線が引き立ち、反射によって側面がひし形の大きな柱に見えてくるから不思議です。

 
あれ?三角だったのに?

ちなみにビュレンさんのストライプはすべて「8.7cm幅の垂直」と決まっています。カラフルな作品群の中で、ひと際目を引くのが黒一色の面を持つ作品です。色がそぎ落とされたことで、ストライプの存在感がひときわ際立ちます。

ストライプがくっきり

会場のSCAI THE BATHHOUSEは、銭湯を改装したということもあってか、高い天井から差し込む光も展示の醍醐味といえます。作品の影が白い床に映ったりして、光のマジックも楽しめます。

立ち位置、天候、光の角度…条件によって表情を変える

今回、ビュレンさんはご高齢にもかかわらず、自ら来日して作品の展示準備にあたったそうです。近年の彼は、「光」や「反射」によるアプローチを多用していて、鏡面には来場者の姿も作品の一部として映り込みます。その人の立ち位置やその日の天候、差し込む光の角度によって作品は表情を変え、見え方が変わります。まさに一期一会の視覚体験なのです。

別の作品、天井のライト、窓の光、すべてが映りこんでいる!

そんなビュレンさんは1970年以来、200回近くもの来日経験がある知日派で、2007年には文化芸術のノーベル賞ともいわれる高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)を受賞するなど、日本とも縁の深いアーティストです。

筆者はどの作品も、横からのぞき込んだり、下から見上げたり、思いきり近づいてみたり。視点が変わるたびに、変化する光景に時間を忘れて没入してしまいました。

会期は5月16日まで。残りわずかな期間ですが、ぜひ谷中の静謐(せいひつ)な空間で、ストライプと光が織りなすアートに興じてみてください。

<開催概要>

展覧会名:ダニエル・ビュレン「Third Eye, situated works - 知覚の拡張—そこにある眼差し」

会場:SCAI THE BATHHOUSE

期間:5月16日(土)まで

開廊時間:12時~18時 ※日・月・祝日休廊

入場:無料

公式サイト:https://www.scaithebathhouse.com/ja/