アニエス・ベーといえば、流行に左右されないシンプルで機能的なデザインのファッションブランドとしておなじみですが、日本にはあまり知られていないストリートアートとの関わりに焦点を当てた『agnès b. on aime le graff!! _50年、ストリートとともに』が開催中(~6月8日)です。
アニエス・ベーが持つブランドのもうひとつの顔
会場は渋谷PARCO4階の「PARCO MUSEUM TOKYO」。ファッションとストリートアートが融合した展覧会を開くにはうってつけの場所です。
この展覧会は、アニエス・ベーの創業者であるデザイナーのアニエス・トゥルブレ(Agnès Troublé)さんのストリートアートサポーターとしての一面にフォーカス。彼女の膨大な所蔵コレクションから、グラフィティの歴史を彩る貴重な作品群が公開されています。
会場に入ると、アニエスさんとストリートアートの長い関わりを示す年表があります。
ストリートアートは2000年代にブームが到来しましたが、それまでは落書き同然のグラフィティとして冷たい目で見られていました。しかし、アニエスさんは1976年にパリで初めてのブティックをオープンした頃から、一貫してストリートアートの支援者でした。
シンプルなイメージのあるアニエス・ベーですが、会場には、アーティストの作品をプリントした大柄なデザインの服が並んでいます。アニエスさんは「グラフィティは心の叫びであり、何かを伝えたいという衝動だ」と捉え、直感で作品やアーティストを見出してきたといいます。
宇宙人のような、くらげのようなモチーフの絵の向かいには、同じ柄の黒いワンピースが。アートを洋服に落とし込み、人がそれを身に着けて街を行き交うことで、作品をより広く紹介しようとしてきたのです。
モノクロ写真と水色の幾何学模様で作られた木製の扉の作品は、まさに“絵をまとうドレス”に仕立てられていました。これを着た人が電車に乗り、飛行機に乗れば、本来はかなく消えてしまう運命のストリートアートが、国境を越えて世界の人々の目に触れることになります。
今回、展覧会を企画したアニエスベー ジャパンの古宇田リヴォー朱美さん(カルチャーコンテンツ&ギャラリーマネージメント)に話をうかがいました。ニューヨーク出身のストリートアーティスト、JONONE(ジョンワン)さんの作品シャツを着ての登場です。
「私が着ているシャツも販売していたんですよ。マネキンが着ている同じ柄の紳士物の上下スーツは大阪のスタッフの私物です」と笑顔で説明してくれた古宇田さん。
「これは一点物で販売はしていないのです」と教えてくれたのが、アメリカのアーティスト、ライアン・マクギネスさんによるドレスとジャンプスーツ。衣服に直接描いたアート作品だそうです。
アニエス・ベーでは長年、アーティストのTシャツを手掛けており、バスキアの自画像もアニエスさんのコレクションの作品だといいます。
会場にはそうしたアーティストTシャツが一挙に見られるコーナーもあり、見ごたえがあります。壁に貼られていたり、天井からぶら下がっていたり、おしゃれなディスプレイ。お気に入りの一枚を見つけてみるのもいいかもしれません。
アニエスさんは、同じ服を何十年も着続ける方だといいます。アートを洋服に落とし込むことで、描き手が誰であれ、本来なら消えゆく作品が40年、50年と生き続ける――。そんな哲学が、このブランドの根底には流れているのです。
お帰りの際には、年表の下に置いてある「Point d'ironie」(ポワンディロニー)をピックアップするのをお忘れなく。アニエスさん自身がパリ、ローマ、ヴェネツィア、ロンドン、香港、東京などで撮影したグラフィティをまとめたアートタブロイドで、レイアウトもアニエスさんが手掛けたものです。
筆者もいただいて帰り広げてみたところ、表も裏もストリートアート写真がびっしり。
この無料配布は、世界文化賞(絵画部門)を受賞したフランス人アーティスト、故クリスチャン・ボルタンスキーさんとの対話がきっかけで始めたものだそう。
その下段に記された「Walls can talk(壁は語る)」つまり、「本来消えゆく運命の壁の声を、ファッションを通じて語り続けさせる」という言葉こそ、アニエスさんが伝えたい究極のメッセージではないでしょうか。
展覧会は6月8日(月)までですので、お早目に。この後、台湾でも開催される予定です。
<開催概要>
展覧会名:agnès b. on aime le graff!! _50年、ストリートとともに
会場:PARCO MUSEUM TOKYO(渋谷PARCO 4F)
東京都渋谷区宇田川町15-1
会期:~2026年6月8日(月)
開場時間:11時~21時
※入場は閉場の30分前までとなります。
※最終日は18時閉場となります。
入場料:500円(税込)
※未就学児無料
※商品は展覧会に未入場でも購入できます。
展覧会オフィシャルページ:https://art.parco.jp/museumtokyo/detail/?id=1921
