重厚な物語の中にポアロらしいユーモアがきらりと光る本作。その醍醐味は「真犯人は誰か」「トリックはいかに仕掛けられたのか」という謎解きの妙にある。そんな推理劇を片岡さんと鈴木さんは日頃、どのように味わっているのかを聞くと…。

片岡鶴太郎 謎解きのセリフは過去一長いものになるかも

――推理劇といえばトリックが物語のカギとなりますが、謎解きは得意ですか?

片岡:僕はあまり得意なほうではないです。

鈴木:そうなんですか?僕は好きではあるんですけど、向いてないことを自覚しています。何事も一度失敗しないとなかなか成長できないタイプで、そういう人間はあらゆる失敗を乗り越えたうえでひらめいたり、かつての失敗にあてはめたりして答えにたどり着くので、そういう意味では何十年か後に開花するのかもしれません(笑)。

片岡:私自身、長く刑事ドラマに携わってきたこともあって、どうしても俳優陣の顔ぶれを見て「この人は犯人クラスだな」と推測してしまう癖があるんです(笑)。

さらに、まったく気配を感じさせなかった人物が真犯人として現れる“仕掛け”が多々ありますので、その視点がなかなか抜けませんね。 

鈴木:映像だと「このカット割りは何のために必要としているのだろうか?こちらの角度から見せている理由は?」などと、つい邪推してしまいますよね。

――舞台の場合、目の前に観客がいることで仕掛けとつながる行動をとれないなど、より緊張感をともなう現場になるかと思います。

片岡:舞台はワンカット長回しのようなものなので、緊張感を抱えつつ、あざとくなり過ぎないような加減を探っていきたいです。

鈴木:舞台ならではの魅力って、上手(かみて)で何かが行われていたのに、次の瞬間には下手(しもて)で物語が進んでいるというように、“首を振って見ていただく”こと、スポットの渡し合いだと個人的には捉えています。

だけど、鶴太郎さんがおっしゃるようにあざと過ぎたら仕掛けがバレてしまいますし、そのあたりのバランスを考えながら演じないといけないのかなって。より繊細なお芝居を求められますが、僕としてはとても楽しみです。

――戯曲をみると膨大な量のセリフが際立っていますが、そこに挑む心境を聞かせてください。

片岡:刑事ものや金田一耕助でも膨大な謎解きのセリフが登場しましたが、今回は過去一、長いセリフになると思います。これをやったら他に怖いものはないんじゃないかな。少しずつ頭に入れていって、あとはもう反復するしかありませんね。

――ポアロとヘイスティングスの関係性をどのように表現したいと考えていますか?

鈴木:二人はおそらく20歳以上離れていると思いますが、戯曲やドラマ版でのやりとりを見ると、その年齢差をほとんど感じさせません。それでいて互いに敬愛の念を抱いていることが自然と伝わってきます。

特にポアロが誰かと会話しているときのヘイスティングスの視線や、直後に交わすアイコンタクトにバディらしい呼吸が表れていて、二人の距離も驚くほど近い。積み重ねてきた年月がにじむ瞬間にふれるたび、舞台版でもこの関係性をしっかり表現したいと感じました。

――公演を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。

片岡:ポアロを扱った映像作品は多くありますが、舞台作品は数えるほどしかありません。この『ブラック・コーヒー』を私と鈴木さんで演じるということに興味をもっていただいて、事件の顛末をぜひとも劇場で目撃してください。

鈴木:ポアロやヘイスティングスと一緒に推理をするような感覚でご覧になっても楽しめると思います。お客様ひとりひとりが“灰色の脳細胞”を存分に使える空間をつくってお待ちしておりますので、アガサ・クリスティの世界を楽しんでいただきたいです。

撮影:河井彩美