日本時間2月14日に行われた、ミラノ・コルティナ五輪フィギュアスケート男子シングルのフリー。“4回転の神”と呼ばれる世界王者イリア・マリニン選手(21)が、まさかのミスを連発する波乱の展開に。
そんな中、フリーで5本の4回転を見事成功させた、カザフスタンのミハイル・シャイドロフ選手(21)が金メダルを獲得しました。
今回が初出場となる日本の佐藤駿選手(22)は、ショートプログラムは9位と落ち込んだものの、フリーは序盤から4回転を立て続けに成功させる、“会心の演技”を披露。
日本のエース・鍵山優真選手(22)も、序盤4回転ジャンプのミスがあったものの、最高評価のステップとスピンで審査員を魅了し、見事、鍵山選手は銀メダル、佐藤選手は銅メダルに輝きました。
一方で、優勝が有力視されていたアメリカのマリニン選手は、予定していた4回転半が1回転半になるなど、らしからぬジャンプのミスを連発。結果は、まさかの8位となりました。
『サン!シャイン』は、バンクーバー五輪に出場した元フィギュアスケート男子日本代表の織田信成氏をゲストに招き、“世界王者”の敗因と、メダルに輝いた鍵山優真選手と佐藤駿選手の“強さ”について詳しく聞きました。
“世界王者”がなぜ?五輪のプレッシャーと団体戦との日程
元日本代表 織田信成氏:
まずは、鍵山選手、佐藤選手、本当に素晴らしい演技で、メダルおめでとうございます。優勝したシャイドロフ選手は今シーズン苦しんでいたのですが、攻めの構成をこの五輪で決めたという、堂々の金メダルでした。
織田信成氏:
そして、やはり優勝候補と言われていたマリニン選手の、本当にびっくりするようなミスというのも、見ていてつらかったです。
4回転アクセルが抜けた辺りから、ジャンプが抜けるというのは彼自身珍しい、特にアクセル系のジャンプが抜けるのは珍しいなと。
特に最後の最後のサルコーも、インサイドエッジ(内側のエッジ)に体が完璧に持って行かれているようなミスなんです。こういうミスは体力的にと言うより、ジャンプのタイミングがほぼあっていないので。ミスが続く中で気持ちが焦ってしまったのか、言えるのは通常の精神状態ではなかったのではないかなと。
――4回転半を失敗した時点で相当追い込まれていた?
そうですね、アクセルも失敗してループも失敗してというなかで、取り返さないという焦りだったりもあったと思います。
――2年間無敗の選手でもそれだけプレッシャーがかかると?
ミラノ・コルティナ五輪は特に4回転を中心とした空中戦になると思っていて、それを引っ張っていくのはイリア・マリニン選手だと思っていたんですが、マリニンの4回転は本当に見ていると3回転のように簡単に跳ぶなと思っていたんですが、やっぱり4回転ジャンプというのは、誰だったとしても簡単なジャンプではないというのを改めて感じました。
本当にものすごい構成を、今までも簡単にやってきたように見えて、決して簡単ではないのだなと。
――突然プレッシャーに襲われるということはあるのですか?
僕は五輪の時は、演技(スタートポジションに)ついたとき、頭が真っ白になりました。音楽を聴いて体を自然に動かす流れでなんとか乗り切れたと。
――ショートとフリーはそんなに違うものなんですか?
フリーの方がジャンプの本数が多いので、結構メンタル的には好き嫌いが分かれるところではあります。フリーの方が本数が多いので巻き返せるというのもあるんですけど、ただやはり前半にミスが続いてしまうと、取り返そうという気持ちが、焦りにつながってしまったのかなと。
スペシャルキャスター カズレーザー氏:
(負けたときは)失敗シーンがどうしても取り上げられちゃうじゃないですか。
でも、これは長い闘いの中で、1敗しただけなんですよね、まだまだ(マリニン選手は)絶対王者のポジションじゃないですか。
本当に完璧な演技の映像はいっぱいあるので、見たら顎が外れるくらいすごいんですよ。本当に意味が分からないくらいすごいので、そっちをもっと見てほしいですね。
織田信成氏:
団体戦もショート、フリーを滑っていて、短い期間での調整というのもあるので、それは普通の大会ではやらない、五輪でしかやらないことなので、そういった体力的・精神的調整というのもやはり難しいところはあったと思います。
(単純な)体力的には大丈夫かなとはいう気はするのですが、僕たち練習でもっとハードなことをしたりもするので。ただ、それプラス『演技』で(団体・個人のショートフリー合わせて)4回、人前で演技するというプレッシャーを乗り越える力が、団体戦を含めると大変なこともあるのかなと。
二人のメダリスト…勝因は“表現”と“メンタル”
――鍵山選手と佐藤選手がメダル獲得に至ったポイントは?
織田信成氏:
鍵山選手は冒頭ジャンプのミスはあったのですが、この4年間積み重ねてきた“表現するフィギュアスケート”、技術面を鍛えるというところで、スピンやステップ、そして全体の表現が、ミスがあってもしっかりそこをおさえて滑り切れたというところが、銀メダルにつながったのではないかと。
織田信成氏:
佐藤選手は、ミラノに来てからショートで少しジャンプの回転が回りすぎたところはあったのですが、それ以外はほとんど成功させていて、成功するだけじゃなく出来栄えでも+2、+3をもらえるような素晴らしいジャンプを跳んでいたので。そういうところで、技術点で高い得点を出せたというところが、銅メダル獲得につながったと思いますし、五輪でこれだけ、通常通り自分をコントロールして演技できる、彼の…“ブレなさ”というか、精神的な安定感というのは、どうやってそんなに落ち着いてられるの?というくらい、素晴らしいものがあったと思います。
(『サン!シャイン』 2026年2月16日放送より)
