──リッチェストを演じるうえで意識していることはありますか?
説明をわかってもらうことです。尺の問題もあって、展開がかなりハイテンポなんですよね。言葉もテンポよく発していかなければいけなくて。字幕のフォローはあると思うのですが、耳に入る言葉の輪郭をはっきりとさせたいというのが一番のポイントでした。わかりづらい音にならないように、と。
──難しかったことはありますか?
「ここでこういうことが言えたら面白いけど…」と思うシーンはたくさんあるのですが、「ペイ・チェンがしゃべっているから邪魔になるな」「これはやりすぎになるな」ということが多くて。そこの塩梅が難しかったです。
アニメーションの動きが面白いと、ついつい悪い癖でいろんな声をあてたくなるのですが(笑)、そこは音響監督とジャッジをして収録しています。
逆に、収録の時点で絵が100%出来上がっていて、確定情報のなかでアイデアを出せるのは、演じる側としてはめちゃくちゃ楽しかったです。
福山潤 小野賢章の苦労をおもんばかり「大変な目にあってるね」
──反映されたアイデアには、どのようなものがあるのでしょうか?
第1話でリッチェストは「手!」「足!」「プリケツ!」と言いながらペイ・チェンの前に登場するのですが、原音ではそんなことひと言も言っていないんです(笑)。リアクションとして「うんっ!」「はっ!」というくらいで。
でも、登場シーンであれば誰にも迷惑をかけないし、「こういう人なんです」というキャラクターを説明にもなるので、ああいうふざけた感じにしました(笑)。ほかにも、入れられるところには、そういう遊び要素を入れさせてもらっています。
──ペイ・チェンを演じている小野賢章さんとの収録エピソードも聞かせてください。
小野賢章と僕、最近、作品のなかでコンビを組むケースが増えてきていて。でも、これまで賢章の役はベラベラとしゃべるコミカルなものではなく、影をまとった青年とか、繊細なキャラクターで一緒になることが多かったんです。
どちらかと言うと、ベラベラしゃべるキャラクターを演じるのは僕でしたし、今まで僕が演じてきた系統の役を賢章がやっているのを見ると、うれしかったです。
ただ、ペイ・チェンのお芝居は自然に見えますが、大変ですよ。絵は確定していてセリフの尺もきっちり決まっているのに、ものすごい情報量をしゃべらなければいけませんから。リッチェストもそれなりにしゃべりますが、あまり出番は多くないので、賢章ほど大変ではないんです。
なので、彼の大変さをおもんばかって「大変な目にあってるね」と声をかけつつ、ニヤニヤしています(笑)。
──好きなシーン、印象に残っているシーンはありますか?
良かれと思ってやったことが裏目に出て、損をしようと思っているのに利益が上がってしまい、ペイ・チェンがお金を得られない状況になっています。演出面では「そんなバカな」という展開が続き、派手なリアクションも多くて、それがどんどんエスカレートしていきます。
そういう派手な感情表現や荒唐無稽なお芝居をやらせていただく機会が近年減ってきているのですが、改めてこのテイストを提示したときに皆さんにどう刺さるのかなと楽しみにしていました。実際、皆さんに楽しんでいただけている実感も得ています。
あとは、意味深なキャラクターが多い。リー・シー(CV:杉田智和)なんて意味深なことしか言ってないし。「なんなんだろう、この人」と思いますよね(笑)。見ている方も「この人はこのあとどんな動きをするのか」などと考えながら見てくださっていると思うのですが、僕たち演者もどんな結末に向かっていくのかを楽しみに収録していました。
撮影:河井彩美
