――碧は19歳、小澤さんは20歳と同年代ですが、共通点はありますか?
境遇は違いますが、まったく似ていないというわけではありません。僕自身はオープンな性格ではあるものの、気持ちを言葉で表すことが碧と同じように苦手で。碧は複雑な家庭環境から受けた影響がとても大きい人物なので、立ち振る舞いなど悩むところが多かったです。
――そんな碧を演じるポイントになったことを教えてください。
碧のバックボーンをふまえたうえで、人を信じたいと思っているのに信じることができないもどかしさや表情、立ち姿、中でも目つきは意識して演じました。
小澤竜心『終幕のロンド』を通して、大切な人たちとの絆を実感
――撮影を振り返って、特に印象に残っているのはどのようなことですか?
碧の過去に何があったのか明らかになる回があって、中村雅俊さん演じるHeaven‘s messengerの磯部社長の前で感情が昂り、涙を流すというシーンだったのですが、この作品において碧がもっともクローズアップされる重要な場面で。
台本には「泣く」と書いてあるものの、当然、碧のような経験はしたことがないですし、泣くお芝居も初めてのことなのですごく不安で、いろんな方たちに「どうやって泣くんですか?」と尋ねたり、泣ける映画を観て参考にしたりなど準備を重ねたんです。
宝来忠昭監督や雅俊さんが「涙がすべてじゃないから」と言ってくださいましたが、いざそのシーンになったら、雅俊さんのお芝居や碧を思う社長の気持ちにグッときてしまって、リハーサルの段階から自分でも驚くくらいの涙があふれてきて。碧という役柄に心から向き合えたと実感できる貴重な時間でした。
――今だから明かせる裏話みたいなものはありますか?
実は撮影中に髪を切り過ぎてしまったことがありまして…。髪がだいぶ伸びてきて、ヘアメイクさんに相談し、「これくらいだったらOKですよ」となったので美容室へ行ったら、思いのほか短くなってしまって。うまくセットしていただき、何とかごまかしたのですが、目を凝らしてみたら、前半と比べて後半のほうが短くなっている部分があります(笑)。
――この作品に携わったことで、死生観について意識の変化はありましたか?
いつ何が起きてもいいように、とにかく楽しもうということは以前から大事にしてきましたが、亡くなった方がどんなふうに生きていたのか、そして、残された人たちが大切な人の死と向き合ったことでこの先、どう生きていくのかなど勉強させられました。
僕の祖母は数年前に他界しましたが、祖母が亡くなったときの祖父や両親の様子をふと思い出したんです。そんなふうに、このドラマを通していろいろな方が大切な人との記憶がよみがえり、次の一歩を踏み出すきっかけにもなるのかなって。
家族であったり、友だちであったり、さらに、仕事でお世話になっている方たちをもっと大切にしなければ思いましたし、そんなことをふまえたうえで、もっといろんな人たちと会話をしようなど、小さなことですけど考えるようになりました。
撮影:河井彩美
