磯村勇斗さん主演、堀田真由さん、稲垣吾郎さん出演の月10ドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』。
このたび、脚本家・大森美香と岡光寛子プロデューサーのコメントが到着。
後編では、ドラマを彩るキャストや白鳥健治の「ムムス」誕生秘話、印象的だったエピソードなどを語っています。
(前編はこちら)。
主演・磯村勇斗について「人間性も含めてとても信頼している」
脚本家・大森美香×岡光寛子プロデューサー(後編)
――主人公・白鳥健治を演じる磯村勇斗さんについて聞かせてください。
岡光:キャストは、大森さんと相談しながら決めさせていただきました。白鳥健治はとても繊細な主人公なので、演じられる人は限られますよね…と話していた際、磯村勇斗さんのお名前がほぼ同時に挙がって。大森さんの作品では、大河ドラマ『青天を衝け』(NHK)、私は白石プロデューサーと初めて手がけたドラマ『TWO WEEKS』『アバランチ』でご一緒していました。
芝居に真面目でしっかりとした軸がありながら、押しつけがましくなくどんな役でも魅力的にしてしまう。いい意味で肩の力が抜けていて、人間性も含めてとても信頼している方なので、オファーしてお受けいただいたときはうれしかったですね。
大森:大河ドラマ『青天を衝け』で演じられた、徳川家茂役が素晴らしくて。ぜひ、またご一緒したいと思っていたので、岡光さんからもお名前が挙がったときは興奮しました。健治は完全なあて書きで、「こんな磯村さんが見たい」をつついて生まれたキャラクターです。実際、ドラマを見るたびに健治さんの繊細な演技に見入ってしまっています。
――堀田真由さんの珠々ちゃんもハマり役です。
岡光:堀田さんも同じく、私も大森さんも「ご一緒したい」とお名前が挙がった方です。心を尽くして全身でお芝居をされる方で、惹き込まれますよね。耳なじみの良い透き通った声もすてきです。
大森:かわいい役も強めの役も演じられる役者さんですが、私は「堀田さんのどストレートなヒロインが見たい」という気持ちが強かった。堀田さんに出演していただいたことで、当初の想定よりも、距離の近い二人が見たくなったんです。
大森:このドラマ自体が、健治さんの成長物語にもなっているんです。人間関係に深みを与える気持ちの一つが“恋愛”だと私は考えているのですが、思いが強くなったり弱くなったり、そこに対する健治の表情が見たかった。堀田さんが珠々さんを演じてくださるとわかって、その気持ちがさらに強くなりました。
岡光:健治さんが他人と関わり、初めての感情をたくさん知っていくなかで、生徒たちとはまた別の感情を珠々さんに抱く。「人と関わったら、こんなに楽しいことや幸せなことがあるんだ」と、感じてほしかったんです。
大森:珠々さんも教師を一生懸命やっている姿とは別に、誰かと関わることで、心揺らぐ姿が見たかった。本音を言えば、健治と珠々の物語だけでも10話書けるし、天文部だけでも10話書けるぞという気持ちでいます(笑)。
岡光:私は大森さんが描くラブストーリーが好きなので、『ぼくほし』らしい愛の形を入れたかった。それは、物理的・刺激的なものではない“心のつながり”で。第9話のプラネタリウムでの2人の告白シーンの脚本を初めて読ませていただいたとき、そのセリフの素晴らしさに胸が高鳴り、そのときのいろんなもやもやがふっとびました(笑)。
自分自身も肯定してもらっている気持ちになり、磯村さんと堀田さんのお二方でこのシーンをやれて本当によかったと思いましたね。視聴者からの反響も大きかったように思います。
大森美香「ムムス」は「軽い気持ちで使っていただけたらとてもうれしい!」
――健治といえば「ムムス」も気になります。ぜひ誕生秘話を聞かせてください。
大森:あまり意識はしていなかったのですが、健治さんとおばあちゃんが長く暮らしている内に、二人の間に共通語が生まれるのではないかと思ったんです。でもきっと、彼の感情を表す言葉は今ある日本語じゃない。もともと宮沢賢治さんのオノマトペが好きだったこともあり、思いつきで書いたら、採用されました。
ありがたいことに、私の周りの人も使ってくださるんですが、軽い気持ちで使っていただけたらとてもうれしい! ちょっと「ムッ」とするのもムムスでいいし、本当に嫌なムムスがあってもいい。ぜひ、気軽に使ってください。
――生徒役のみなさんをキャスティングをする際、意識していたことはありますか?
岡光:若い才能を持った素晴らしい役者さんがたくさんいらっしゃるので、白石さんや山口監督と、気になる方には直接会いに行ったり、オーディションをさせていただいたりと、さまざまなアプローチから選ばせていただきました。
意図しているわけではありませんが、『ぼくほし』の生徒は映画で活躍している方が多い気がします。あとは、なるべく実年齢に近い方に演じていただきたかったので、15歳〜22歳までの等身大の生徒たちで、テクニックや経歴よりも感情の豊かさや人となり、なによりも「この人とご一緒したい」という思いを重視しました。
大森:実際に会ってみると、みなさんとても個性豊かで魅力的。それぞれの良さがあり、岡光さんたちの目は確かだなと思いました。
岡光:ステレオタイプなキャラクタライズをしないことが、大森さんが描く生徒の魅力です。だからこそ、人間の表裏一体な複雑さをウソなく表現できる方とご一緒できたらなと思っていて。みなさん、本当に素晴らしい感性の持ち主で、まっすぐな目でお芝居されていらっしゃり、現場で逆に気づかせていただくこともたくさんありました。