──竹刀を振り回すなど、日高先生の明子ら生徒に対する言動は、現代だと問題になりかねないものですが、お2人は、明子と日高先生の関係性はどのように見ていましたか?

見上:個人的にはうらやましさを感じました。日高先生もただ竹刀を振り回しているだけではないですし、お互いのことを心の奥底で思っているのが見えたので。

自分の人生のなかで、こんなに深くかかわってくれる人って、1人いるかどうかですよね。そういう人に出会えて、お互いに幸せ者だなと思います。

畑:血のつながりがなくて、父親とも違って。でも、ふとした瞬間に見える日高先生の優しさや温かさって、言葉を介さずとも伝わってくるものがあるなと思います。そういった関係を築ける存在は、本当に人生において1人、2人出てくるかどうか。

だから、明子と日高先生の関係を見ながら、恩師、恩人、家族、自分のことを応援したり支えたりしてくれている人を、改めて大事にしたいなと思いました。それに、自分も誰かにとってのそういう存在になれたらいいなとも思いました。

見上愛&畑芽育にとって印象的な恩師は「塾の先生」「演技レッスンの先生」

──お2人には、明子と日高先生のような関係性の方はいますか?

見上:先ほどお話した塾の先生です。生徒一人ひとりと深くかかわって、厳しいことも言うけど、自分たちのことを思っていることが伝わってくる先生で。自分が進路を選ぶとき、大学を受験するときも「できることは何でもするよ」と力強く言って、見守ってくれたことが印象に残っています。

畑:ステキ!

見上:高校卒業してからは、塾のお手伝いに行っていました。

畑:え!?先生をされていたんですか?

見上:いや、教えられないからお手伝いで(笑)。でも、その後もずっとお付き合いがあって、今もご飯を食べに行きますし、すごく大切な存在です。

──畑さんはいかがですか?

畑:中高生の頃受けていた、事務所の演技レッスンの先生が印象に残っています。

お芝居のアプローチの仕方を含めて、その先生がかけてくれた言葉はすごく勉強になりました。しかも、私の性格やメンタルのことも気にかけて寄り添ってくださいました。何も言わなくても見透かされて、嘘が全部バレてしまうような、そんな不思議な存在でした。

いまだにお芝居のことで立ち止まったり、頭を悩ませたりするときは、当時のノートを見返して参考にしています。

──先生の言葉を書き残しているんですね。

畑:ホワイトボードも使いながら、勉強会みたいなレッスンだったので、たくさんノートに残っています。あれは本当に楽しい時間でしたね。青春でした。

──明子と日高先生の関係性もそうですが、「出会えてよかった」と思える“出会い”には何が必要だと思いますか?

見上:自分のことをさらけ出すことだと思います。自分は壁を作りながら、相手にだけ「全部見せてください」と言うのはおこがましいと思うので、「この人は、長く付き合う大事な友だちになるかもしれない」と思う人には、なるべく自分からさらけ出します。

畑:私もまったく同じこと思っていました!自分の心を開くことは意識しています。さらけ出しすぎも良くないですけど(笑)、大事ですよね。

見上:「大丈夫だよ~」ってね。その結果、「あれ?あんまり仲良くなれなかったかも」と思って、パタンと閉じることもあるけど(笑)。

畑:わかります、ありますね(笑)。

──最後に、映画の見どころ、注目してほしいポイントを聞かせてください。

見上:この映画を観たときに、私は先ほど話した恩師や大事な友だちのことを思い浮かべました。そうやって大事な人を思い浮かべる作品になっていると思います。そしてこの映画が、そういった人と連絡を取ったり、また会うきっかけになったりするとうれしいです。

畑:明子と日高先生の関係性が繊細に描かれているので、細かいところまで見ていただけたらうれしいです。あとは、「こんなところに、こんな方が、このキャラクターで!?」と驚くこともあると思いますが、個性的なキャラクターたちの愛おしい姿を見て、楽しんいただきたいです。

撮影:山越隼