──物語の途中で世界線が変わり、リクとミナミの関係性が変化しますが、そのなかで大切にしていたことがあれば聞かせてください。
中島:リクは朝目が覚めたら別の世界線にいったという状況で、ミナミと付き合っていた8年の記憶もちゃんと持っているし、あまり人格の切り替えはしていません。
それでもワンシーンごとに鎧を外していくというか、気持ちのグラデーションは意識していました。
milet:そういう感じした!
中島:徐々に鎧を外して、イノセントな状態でミナミと向き合って、本当に大切なものは何かということを知っていく。少しずつ自分の中で感情を埋めていった感覚です。
そのなかで大切にしていたのは、シンプルに飾らないでいることですね。三木監督から「大人になったのび太くんの気持ちでいてほしい」と言われたことがあったのですが、最初は「のび太くん?」と不思議だったんです。
でも、リクにとって桐谷(健太)さんが演じるカジさん(梶原恵介)がドラえもんのような存在で、ifの世界線では「カジさ~ん」って、のび太くんのように泣きつくことがあって。もともとの世界線の小説家として売れていたリクは、絶対にそんなことやらないんです。
ただ、人間はどこか弱い部分があって、誰かに共有することで支え合うことを知っていくんですよね。三木監督の言いたかったことがわかったので、より飾らないことを意識できるようになりました。
世界線が急激に変わるなかmiletが大切にしていたのは“リク(中島健人)に心を開いている度”
──miletさんはいかがですか?
milet:私はどちらかというと、カチ、カチと気持ちを切り替えていく作業が大きかったなと思っています。物語としては、リクのことが大好きだった翌日にはもうまったく知らない間柄になっていますから。
だから、“リクに心を開いている度”みたいなものは自分で作って、シーンごとにどれくらいの気持ちなのかということは考えて撮影に臨んでいました。
──気持ちのパーセントは、三木監督と話し合うこともありましたか?
milet:完全に個人的でしたね。でも、“心を開いている度”が50%のシーンを撮影した翌日には10%のシーンを撮ることもありましたし、細かな部分は三木監督から「もう少し心を開いてるよ」などと教えていただきました。
あと、三木監督からは「ミナミにはいくつかの顔がある」と言われていて。リクに向ける顔、おばあちゃん・前園和江(風吹ジュン)に向ける顔、ifの世界の恋人・田所哲斗(眞島秀和)に向ける顔、「はっきりと違うミナミのカラーが出るといいな」という言葉が演じるうえでのヒントになっていました。
ただ、難しかったこともあって。三木監督には「miletのままでやっていいよ」とよく言われていたのですが、「素でいい」と言われると何が素なんだろうかと悩んでしまったんです。でも、あまりセリフをセリフと考えないようにするとか、考え方を変えて頑張りました。
──撮影時の印象に残っているエピソードを聞かせてください。
中島:ミナミが主題歌にもなっている『I still』を歌うライブシーンがあるのですが、僕の涙が止まらなくなってしまって、リハーサル開始10分くらいで退場させられました(笑)。
その日の撮影までにリクとミナミの感情に寄り添うことができていたからか、曲を数秒聴いただけで号泣しちゃって。
本当は、カメラに映らなくてもミナミの目線の先にリクとしているべきだったのに、三木監督から「健人くん、大丈夫だから出てって」と言われてしまって。
milet:いなかったんだよね(笑)。
中島:あれって、レストランの前に撮ったんだっけ?
milet:あとだったと思う。
中島:レストランでもいろいろあったんです。その話は今はやめておきますけど(笑)。ライブのシーンは、朝8時くらいからリハーサルでしたが、8時半に一旦メイクを落として家に帰って、1回お風呂に入ってから、改めて撮影に行きました。
milet:そうだったんだ!?