──レストランのシーンの話も気になります。
中島:三木監督からどうしても泣いてほしいと言われていたシーンがあったのですが、僕の涙が止まってしまって。なんというか…一気に感情が入りづらくなることがたまにあって、今回もそれだったんですけど。
現場にもリミットがあって、撤収もあるから必ず決められた時間までに撮影を終わらせなければいけないし、何テイクもできない、レストラン内で別のカットも撮らなければいけないという状況で。それでも涙が出なかったんです。
現場は「もうしょうがないからOKで」という空気感になっているけど、諦めきれなくて「もう1回できませんか」とお願いをして。本当に最後で、と。そうしたら、本番5秒前にmiletさんが手を握って「リクくん、私たちは愛し合っていたんだよ」って言ってくれたんです。
その直後に「よーい、はい!」と声がかかって、涙がボワーッと出て(笑)。
milet:めっちゃ泣いてたね。
中島:あれはやばかった。
milet「役に立ってよかった」中島健人の号泣を誘った言葉をかけた理由は…?
──miletさんは、そのときどういう思いで声をかけたのですか?
milet:涙を流してほしいとかそういうことではなくて…こんなにつらくて切ないシーンだけど、リクとミナミは愛し合っていたんだよなって、映画を見てくださる方は思うと感じて、その気持ちを伝えただけです。
中島:対面の芝居ってプレッシャーがあるし、相手に対して何も言わないほうがいい場合もあるじゃないですか。僕自身これまで出演してきた作品のなかで、思うようにいかなくて、慰められてよりダメになったこともありますし。
でも、miletさんがミナミとして話しかけてくれて、一気にデートシーンとかいろいろなことをバーッと思い出して…あの瞬間はやばかった。今までに経験したことがない感覚でした。
というか本当に、映画出演、何作目ですか(笑)?信じられない引き出し方をするよね。しかも、試写が終わったあとに「あの涙は、私の涙でもあるよね」って言っていて。おっしゃる通りなんだけど。
milet:私の涙です(笑)。あれは要のシーンだったし、お互いに長ゼリフが続いていたんだよね。それがまたプレッシャーになっていて。
でも、リハーサルを重ねるうちにグルーヴができて、私は本当にワインを一気飲みしたような気持ちでしゃべることができていたんです。
中島:ぶどうジュースだけど、何回も飲ませちゃってごめんね。
milet:たくさん飲みました(笑)。でも、役に立ってよかったです。
中島:感謝してます。
──撮影のなかで関係性を築いたことが伝わってきますが、撮影の初日はリクとミナミのデートシーンなどアドリブが多かったそうですね。緊張しませんでしたか?
milet:私はあんまり緊張しなかったです。
中島:それがすごいよね。僕は結構緊張したんですよ。お芝居では初共演だったので、どういったセッションが行われるのか想像ができなくて。しかも、セリフがないシーンって、お互いに信頼関係がないときついなと思っていたので。
milet:私は、リクを通して“中島健人”が見えたから、すごく安心していたんだと思う。リクと中島さんに共通する点があったというか、中島さんの中からリクを引き出しているんだということが分かって、向き合えている気がして。
取り繕っている人よりも、素顔で迎え入れてくれる人のほうが、自分をさらけ出せますし、自分の中のミナミが出せたのかな、と。だから、あのアドリブのシーンが初日でよかったなと思っています。