ルール⑦:人のせいにしない

劇中音楽の最終工程に差し掛かると、彼女から「コーラスを、ほんの髪の毛ひとすじ分、下げてもらって」「リズム系が割とぼやけちゃってもいい」と、細かい調整が入った。

些細な違和感も聞き逃さないというこだわりの背景には、過去の彼女への反発があった。BGMを仕事にしている人の多くが「下請け」だというこの業界で、以前結果が思わしくなかった際に、人のせいにしてしまったという経験が。当時のことについて「私は、すごく弱い人間だった(ために人のせいにしてしまった)。でも『それはいかんな。人のせいにしないぞ』って決心したタイミングが結構あった」と、振り返った。

「ものを作っている方ってみんなそうだと思うんですけど、自分と戦うので精一杯で。評価がどうあれ『これがベストだと思うものを出す』という到達点しかない」と、作り手としての誇りを語ると「向かい合った作品にふさわしいものが出来なくなったら、辞めるしかない」と覚悟を見せた。

さらに発注を受けることについて「その物語に音楽をつけていいのは、世界で私だけなんです。それはすごく名誉なことだと思うので、なんとかして応えたい」と微笑んだ。最後に、「すごくいいシーンが出来たときの幸福感以上のものは、今までの人生でも発見したことがないので、こんなに幸せな仕事はないと思っています」と、作曲家人生を噛み締めた。

スタジオでは、ゲストの赤江珠緒が「『自分にオファーが来た仕事は、自分だけが出来ることだからありがたい』とおっしゃってましたが、それと同時に大きな責任も背負っているので、カッコいいなと思いましたね」と、梶浦の言葉を称賛した。

続けて、赤江が「結婚式での新郎新婦入場」のシーンでも、「かける音楽によって登場の仕方が変わる」と、自身の経験を振り返りながら熱弁。長濱ねるが「何にされたんですか?」と尋ねると、赤江は「ダンシング・クイーン(ABBA)にしました」と明かし、笑わせた。

※記事内、敬称略。