伏線回収をしたことによって、このドラマのテーマが浮かび上がってくる

では、この『新宿野戦病院』のどこに“新しさ”があるのか?

それは当然、宮藤官九郎さん脚本で、 “医療”のイメージとまったく結びつかない“新宿歌舞伎町”という舞台、その時点で、もうすでに、“新しい”わけですが、それ以外に、個人的に挙げたいのが、“天才ではない!?医師の造形”と、“笑える手術シーン”です。

うん、いやいや、天才ではない!?医師とか、その時点で、ちっとも新しくないじゃん?とお思いでしょうが。安心してください。『新宿野戦病院』は、そこから巧みに、もっともっとひねってきます。

このドラマのもう一人の主人公、仲野太賀さん演じる高峰享が、美容皮膚科医で、今回の“野戦病院”=外科医ではなく、ちっとも役に立たないという点でもひねりは加わりますが、 “医療ドラマ”という視点に立ったときに、もっと巧みな“新しさ”を感じるのが、ヨウコ・ニシ・フリーマンの造形です。

片言の日本語(しかも岡山弁)というキャラにももちろん“新しさ”は垣間見えるんですが、キャラクターの外見上の特徴だけでなく、これまでの“医療ドラマ”には決してなかった、“手術の処置方法(とその後)”が斬新すぎて“新しく”、そしてそこに、宮藤さんらしい“面白さ”と“人間らしさ”が詰まっているのだから巧みなんです。はたして、その“新しさ”とは何か、必見です。

そしてもう一つの“新しさ”が、“笑える手術シーン”。もちろん宮藤さん脚本なので、笑えないと宮藤官九郎作品ではなくなってしまうわけなんですが、だからといって、手術シーンは特に茶化せないし、間違えられません。

そこに笑いを入れてしまったら、医療をバカにしているようにも見えちゃうからです。だけどだけど、そんな“手術シーン”をも“笑い”に変えようと果敢に挑戦し、成功させてしまう、さすがの脚本。

緊張感と笑いの均衡を保ちながら、だけどギリギリ笑い優位で攻めつつ、いいのかな?笑っていいのかな?という、こちら側の緊張感が若干勝りつつも、とはいえ、面白すぎて、案の定、笑ってしまう、ちゃんと、“笑える手術シーン”に昇華させてしまうのです。

で、驚きなのが、その後。前半にある“笑っていいのかな?”という若干の疑問すら伏線になっていて、後半ではそれを見事に回収していく展開が見事です。そしてそれは、作劇的な巧さだけでなく、伏線回収をしたことによって、このドラマのテーマが浮かび上がってくる…という構造に驚愕します。