宮藤官九郎 実在の街を舞台にする際のルール「その場所に足を運ぶ」
──宮藤さんはこれまで『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』(ともにTBS)など実在する街を舞台にした作品が多い印象があります。そういった作品をつくる際、意識していることはありますか?
ガイドブックやネットの情報は、どうしても見せたいところだけ書いていることが多いので、なるべく足を運ぶようにしています。自分が行って経験したこと、体験したもののほうが筆が乗りますし、作品を見た方が「初めて聞いた」というものを探しています。
木更津の街にタヌキ(の置物)がいっぱいいるっていう情報はネットに載ってなかったですし、やっぱり実際にその場所に行ってみないと分からないですよね。
じゃあなんでそういうドラマをつくるかと言うと、ドラマなので“嘘”なんだけど、なるべく嘘の数を減らしたいという思いが昔からあって。見ている人に「自分と関係のない世界の物語だ」と思われたら損だなと思うんです。
あの街に行けば、もしかしたら彼らに会えるんじゃないか、登場人物がまさにここで生活をしているんじゃないかと思ってもらいたいんですよね。
実在の人の名前や固有名詞を出したりするのも、登場人物たちが、僕らと同じようなことを話してると感じてほしいからです。
──社会問題をコメディとして今の時代にテレビでやることについてはいかがですか?
うーん…怒られるかもしれないなと思いながら、でもなるべく怒られたくないなと思いながらやっています。
いろいろな人にチェックしてもらって、「大丈夫ですよ、宮藤さん」と言われて、結局怒られることもあるけど(笑)。それはもうしょうがないですよね。テレビで連続ドラマをやろうと思ったら、今はそういうことを怖がっていると何もできなくなっちゃいますし。
僕はただ事実を、「こういうこと、本当にあるよね」と言いたいだけなんですけど。だからこそ、気をつけていることで言うと「中途半端にしない」ということですかね。
あとは、誰かをことさらに攻撃しない。片方だけを“悪”にしたくないですし、それぞれにそれぞれの事情や見え方があって、「実はみんな言っていることはそんなに変わらないのでは?」と思うことも多いですし。
一つの事柄に関して、いいところも悪いところも両方あると提示して、見た人が「そういえばそうだな」と考えてくれたらいいなと思って脚本を書いています。
──「怒られることがある」とのことですが、「これは怒られるかもしれない」と執筆前にブレーキをかけるのでしょうか、それとも、脚本にしたあとでスタッフなどと調整するのでしょうか?
ブレーキをかけるくらいだったらやらないほうがいいんじゃないかと思っちゃうんですよね…。
みんな怖がって使わない言葉だけど、「別に言っちゃいけないことじゃないのでは?」というのもある気がして。炎上したり、みんな騒いでるけど、本当にそうかな?よくよく考えると正しいこと言ってる、とか。その見極めが今はどんどん難しくなってきていますけど、思考停止がいちばん怖いので、「本当にそうかな?」と疑って一旦考えるようにしています。
スタッフとのディスカッションのなかで「ちょっと嫌だな」という意見があれば、それで(設定やセリフを)変えようと思い直すことももちろんあります。
そして、やはりコメディをつくっているので、ウケないのは嫌なんです。決して過激なことが言いたいわけじゃないので。他の面白いところを殺すような表現まではしないように心がけています。
ただ、「これを言わないとこのテーマ扱えないよね」ということは、バカなフリをして出してみて、いろいろな人にチェックしてもらうようにしています。
「こういう風に言い換えられます」と提案をしてもらって、表現を変えることももちろんあるし「だったらやめておこう」となることもあって。みんなで作っているものなので、皆さんの意見を聞きながら進めています。
──SNSの意見は見ていますか?
『不適切にもほどがある!』の劇中でも言ったのですが、SNSは見ないという宣言をしています。
でも、「こう言っている人がいましたよ」とわざわざスクリーンショットをして教えてくれる親切な人がいるんですよね。「みんな褒めてます」とか言われて、そのSNSを見てもなんだか…正直、見て良かったことは1回もないので、SNSは見ません(笑)。
作品に対する意見などは僕の耳に入らないところで投げ合ってくれるのはいいんですけど…今はSNSじゃないところまで漏れてきていますよね。例えば、Yahoo!のトップページに小さく見出しが出てるじゃないですか。もうその小さな見出しが目に入っただけで傷つきますからね。見たくないのに、本当に難しい…。携帯取り上げてくれないかな。
昔は視聴率が指標だったから、視聴率が悪ければそっちのほうがショックで、他のことは気にする余裕もなかったけど、今はいいことも悪いことも、「こう言ってる人がいますよ」と言われてしまうと「そうなんだ…」と落ち込んでしまうから、作品が書き上がるまではとにかく耳に入れないでほしい!評判がいいか悪いかだけ教えてくれればいいです(笑)。