『再生のウズメ』は、元子役で、28歳まで劇団で舞台俳優を志していた主人公・田村ウズメ(イモトアヤコ)が、ある出来事をきっかけに、12年間引きこもりに。そんななか、「便利屋救ちゃん」の代表・興梠(白洲迅)と出会ったことで、人生を少しずつ再生していく物語です。
<試写室>『再生のウズメ』第5話
毎回、深度を増していく今作。一見すると地味そうなのに(おい!)、なぜこんなにも心を奪われてしまうのか。
今回は、その魅力を改めて挙げていきたいと思います。
①想像していたドラマと違う!
いきなりマイナスに聞こえる見出しですが、もちろん、いい意味でです。
当初、今作について予想していたのは、引きこもりだった主人公が社会との接点を取り戻し、再生していく物語。もちろん、それは間違ってない…んだけど、今作は決して、引きこもりを一方的にマイナスとして描いているわけではないのです。
「引きこもりからの再生」と聞くと、どうしても、社会に出ていない状態が問題であり、そこから抜け出すことが正解であるかのように聞こえてしまう。けれど、今作は第1話の時点で、主人公のウズメ(イモトアヤコ)が家から出る!という大きな第一歩を、すでに踏み出しています。
そこからのウズメは、誰かに感化されたから変わった、というわけではない。これまで不器用な生き方をしてきた彼女は、長年、社会との接点を断っていたからこそ、ある種の無垢さが備わっている。そして、その無垢さこそが、ウズメの最大の魅力になっています。
社会に出ていなかったからこそ、世間の常識や人間関係のしがらみにとらわれず、人と向き合える。
そんなウズメならではの価値観が、今度は、社会の中で生きる人たちに希望を与えていく…つまり、単に社会を知らなかった人物が、外の世界を知って成長していく物語ではなく、社会との接点を失っていた人物が、そこで培われた自分なりの感覚を武器に、今度は周囲の人たちに影響を与えていく。
そんな、ちょっと複雑で、だからこそ面白い構造になっているのです。
誰かと関わることで、人は成長する。けれど、誰かに影響を与えられるのは、決して特別な人だけではない。自分自身もまた、誰かの心を動かす存在になり得る。
その意外な視点があるからこそ、毎回、ウズメの物語をもっと見たい!と思わせてくれるんでしょう。
②主人公が画一的ではないのに、ちゃんと主人公!
でもって今作のもう一つの面白さは、ウズメが「便利屋救ちゃん」で働き、かつて夢見ていた役者としての特性を活かして、依頼人の身代わりになったり、誰かになりすましたりすることで物語が展開――引きこもりだった主人公が、誰かの代役を演じることで自信を取り戻し、その堂々とした姿によって主人公としての魅力を発揮していく…という物語を想像するわけです。
もちろん、そういうお話もある…のだけれど、今作は、それだけではないのです。
前回の第4話では、身代わりではなく、選挙のウグイス嬢という依頼に挑戦!だったし、その前の第3話では、家出少女を捜す!だったし、さらに今回の第5話では、役所のエアコン掃除!という、もはや本当にただの便利屋さんのお仕事になってしまっている。いや、それでいいんだけども…。
だけどそうなると、便利屋さんの仕事を通して、どうやってドラマを盛り上げるのか?
そもそも、主人公はその道のプロフェッショナルでもないのだから、派手な活躍を見せるわけにもいかない。ともすれば、描かれる物語が地味になってしまいそうです…。
けれど、今作のすごいところは、主人公が誰かになりすますこと自体を、物語の軸にしているわけではないのです。
で、だからこそ、主人公の魅力が爆発する瞬間は、必ずしも、誰かを演じているときとは限らないわけです。しかも、誰かを偉そうに諭すわけでもなければ、喝を入れるわけでもない。かといって、主人公だけが持つ特別な能力や才能によって、無理矢理ポジティブな展開を生み出すわけでもない。
一見すると地味な主人公が、ただただ懸命に働く――そのなかで気づいた、ごく当たり前だけれど、忘れがちなことを、自分の言葉で語る。それだけなのに、その言葉が物語のクライマックスになり、彼女が紛れもなく主人公として輝く。この構造が、実に面白いわけです。
主人公らしい活躍をさせるために、主人公に特別なことをさせるのではない。何気ない仕事のなかで、ウズメだからこそ気づけることがあり、ウズメだからこそ伝えられることがある。
そんな主人公の描き方が、今作の魅力をいっそう際立たせているんでしょうね。
③主人公以外のサイドストーリーも充実!
でもって今作は、当初の想定どおり、引きこもりだった主人公が、便利屋さんの仕事を通してさまざまな人と関わり、成長していく。それだけでも、十分に物語として成立するはずですよね?
毎回、ウズメがどんな依頼を受け、どんな人と出会い、何を感じるのか。そこに特化するだけでも、十分に面白い物語になる。
ウズメがさまざまな人と出会うという土台は、すでにできあがっているのですから、周囲の人物については、そこまで深く描かなくてもいい…はずなわけです。
だけどだけど今作は、ウズメを取り囲むキャラクターたちも、実に魅力的。
ウズメを温かく見守りながらも、切実に心配している両親の描写はもちろんのこと、当初はウズメの単純なライバル的存在なのかと思っていた舞(大原梓)も、決してそうじゃない。
複雑な環境で育ったというバックボーンが丁寧に描かれ、それが今作のテーマとも密接に関わっている。ウズメの存在によって舞自身も成長し、やがて友人へと変わっていく。その関係性の変化、心の距離が少しずつ縮まっていく過程が、実に美しかった。
で、ウズメを「便利屋救ちゃん」に引き入れた興梠(白洲迅)もまた、単なる直感で彼女をスカウトしたわけではなく、彼自身の過去や経験があるからこそ、ウズメの中に可能性を感じている…。
しかも、興梠のバックボーンは、単なる人物紹介にとどまらず、前回から今回、そして次回へとつながる物語の縦軸にもなっている。
それが実に丁寧に展開されているからこそ、こちらも、彼らをただ眺めるのではなく、一人ひとりの人生をじっくりと見届けたくなる…そんなドラマに仕上がっているのです。
こうして周囲のキャラクターたちが丁寧に描かれているからこそ、その中でウズメが主人公として輝く。主人公だけを特別扱いするのではなく、周囲の人たちにも、それぞれの人生や悩み、変化がある。
その描写の積み重ねが、結果としてウズメという主人公の魅力を、より際立たせている!!という構造。
主人公の物語も、周囲の人々の物語も、どちらか一方に偏ることなく、きちんと描ききる。その巧みさがあるからこそ、今作は、毎回の依頼を楽しむだけでなく、登場人物たちの人生そのものを見守りたくなる…そんなドラマになっているのです。
