『その女、ジルバ』にも通じる、賞がとれるドラマに仕上がっている

“とある出来事”をきっかけに、20代最後の時期に大きな挫折を経験した主人公・ウズメ(イモト)。

以来12年間、実家の自室にこもったまま、40歳になった今も外の世界から距離を置いて暮らしている。そんな娘の姿を見かねた母・咲子(市毛良枝)は、部屋の片づけを任せるため、「便利屋救ちゃん」の興梠(白洲迅)に依頼。

ところが、その出会いをきっかけに、ウズメは興梠から“とある業務”を頼まれることに。長いあいだ家の中だけで過ごしてきたウズメにとって、それは新たな一歩を踏み出すきっかけとなっていく―――。

というのが、第1話のあらすじ。

これだけ聞くと、いつもの“ハイテンション”で味つけしてしまえば、主人公の引きこもりも、そんな娘をなんとか家の外へ出そうとする母親の行動も、そして12年間も引きこもっていた主人公に、外の世界へ踏み出すきっかけを与える便利屋さんも、“ノリ”で突破してしまえば、それはそれで成立しそうな話ではあるんです。

実際、引きこもりの主人公を外へ連れ出す、というドラマとしての飛躍に、多少なりとも“ノリ”はある…んだけれど。この作品には、“ノリ”だけでは片づけられない、登場人物たちの行動や心の動きを支える、細かなディテールがちゃんと積み重ねられているんです。

一見すると、長年引きこもっていた女性が、ある出会いをきっかけに新しい世界へ踏み出していく、痛快なシンデレラストーリーにも見える。

だけど、その“踏み出す”までを雑にすっ飛ばさない。どんな思いで、主人公は12年間も部屋にこもっていたのか?なぜ、母親は12年後の今になって娘を外へ出そうとしたのか?そして、なぜ便利屋さんの興梠がウズメに声をかけ、彼女に新たな仕事を託すのか?

そこを一つひとつ丁寧に、そしてウィットに、たまに勢いでもって拾い上げていくから、物語にちゃんと筋が通ってくるのです。だから、痛快なのに軽くない。丁寧に作られているのに、決して重たすぎない。そして何より、ちゃんとエンターテインメントとして面白い。

それこそ、『その女、ジルバ』のように――人生のある地点で立ち止まってしまった人間が、何かをきっかけにもう一度前を向いていく。

その過程を、勢いだけで押しきるのではなく、登場人物の心情や背景をじっくり描きながら、ちゃんとドラマとして成立させている。それでいて、見ていて気持ちいい。ぐっと心に染み入る人間ドラマでありながら、ちゃんと“ドラマを見る楽しさ”もある。

これは…これは…『その女、ジルバ』にも通じる、賞がとれるドラマに仕上がっている=つまり、“文芸”路線(いやらしいよ!)!!!