今井文也「柊はここぞというときに楽しめる人」坂泰斗は玄純の変化・成長に感心

──今作の芝居でこだわった点を聞かせてください。

坂:全体を通して言えることですが、意味のあるセリフに大きく意味を持たせないようにしました。普段、会話をしているときに「この言葉は重要だから」って、あまり立てないじゃないですか。

僕ら声優は音の強さとかで含みを持たせることはできるのですが、この作品ではそれをすべきじゃないというか。重要なセリフでも、音に込める重さの度合いは何度も確認しながら演じていました。

今井:難しかったですよね。完成形の映像にはSEやBGMも入るし。

坂:そうそう。その音によって何気ない言葉も印象的になったりもするしね。

今井:僕もあまり分かりやすくしすぎない、ということは意識していましたね。

キャラクターの顔がアップに映ったりして、決めなければいけないところはありますが、「ここで決めるぞ!」ということよりも、柊は“普通に生きている人”なんだということを大事にしながら演じました。

──今作の台本を読み解くなかで、改めてそれぞれ演じるキャラクターに共感したこと、「そんな一面があったのか」と気づかされたことはありましたか?

坂:ネタバレになってしまうのであまり深くは話せないのですが、とあるシーンで玄純が笑うんですよ。本当に何気なく。

今井:ありましたね!

坂:そのシーンは個人的に「あっ…」と。『柊mix』の終盤でようやく笑顔を見せた玄純が、すごく自然に笑うことになんとも言えない感情になって。しかもその流れが何気なく描かれていて、「すごく成長、変化したなぁ」と感じました。

そのあとに続く言葉が、彼にとってすごく重いひと言だなと思っていて、収録の際に監督に自分が読み取った言葉の“意味”を伝えたら「そういう意味です」と言ってくださって。そこで玄純という人の解釈を深めることができたなと実感しました。それがある種、共感できたところなのかな、と。

──感情の流れが自然と理解できたということですね。

坂:『柊mix』をやる以前は、玄純をそこまで読み込めていなかった気がしていて。『柊mix』がなかったら、今作のあのセリフの捉え方も違ったかもしれないと思っています。

──今井さんはいかがですか?

今井:柊に関して改めて思ったのは、ここぞというときにちゃんと楽しめる人なんだなということです。

坂:そこが素敵なとこだよね。

今井:大事だなと思います。毎度大きな局面には立つし、今回も一丸となって挑まなきゃいけない、乗り越えなければいけないものがあるんですけど、柊はそういうときもちゃんと楽しんでるんです。

坂:そうだね。そういう姿が起爆剤にもなっているし。

今井:そう。不安な思いを抱えつつも、“出しきる”っていうことに重きを置けるってすごいですよね。そのメンタリティは見習いたい。

坂:それがいわゆる“華”なんだよね。

今井:そうかもしれない。