本邦初公開!クリスチャン・ディオールのファッション写真
続いて、ファッション写真のコーナーへ。杉本さんがファッションを「人体とそれを包む人工皮膚を近代彫刻として捉える」視点から撮影したシリーズです。クリスチャン・ディオールが1947年に発表したシンボリックな「バー」ジャケット」を撮影した《スタイアライズド・スカルプチャー 120 [クリスチャン・ディオール、Bar、1947]》(2025年)は、本邦初公開。
また、同じく世界文化賞を受賞した三宅一生さんのドレスを収めた写真もありました。添えられた狂歌の「ビヨーン」という響きが楽しく、思わず声に出して読みそうになりました。
イッセイのプリーツ
「ビョーンビョーン自由自在のそのすがた のびてはちぢみすくわれる女(ひと)」
《スタイアライズド・スカルプチャー 012 [三宅一生 1994年春–夏]》2007
© Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
展覧会タイトルでもある「絶滅写真」のコーナーでは、ロンドンのマダム・タッソーろう人形館で撮影された作品が目を引きます。ダイアナ元妃のモノクロ写真からは、際立つ存在感があふれ出ていました。
ダイアナ・プリンセス・オブ・ウェールズ
「うつつよにおとぎばなしのおひめさま この世になじむこともなければ」
《ダイアナ、プリンセス・オブ・ウェールズ》1999
© Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
ナポレオンのろう人形は、生前の本人から直接型取られたものだそうです。
ナポレオン・ボナパルト
「英雄の面影うつす蝋人形 いたようでもありいたようでもなし」
《ナポレオン・ボナパルト》1999© Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
ヘンリー八世の作品では、杉本さんが英語の韻を踏むという粋な試みも。
ヘンリー八世
「生きのびた(SURVIVED)首をきられた(BEHEADED)死んじまった(DIED) 六人妻の末ぞ悲しき」
《ヘンリー八世》1999© Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
大人気!エネルギッシュな“絶滅”グッズ
“絶滅”を謳いながらも、物販グッズは儚(はかな)さとは真逆のエネルギッシュさです。背中に赤と金の派手な「絶滅」の刺繍が入ったフライトジャケットは、1着8万8000円と高額ながら、開幕直後から何着も売れていました。現在は完売しており会場にて受注販売を受付中とのこと。
実はこちらは、大河ドラマ『青天を衝け』(NHK)の題字でも知られる杉本さんの書と、自身の古美術コレクションである菩薩像・蓮台をモチーフにした、まさに“杉本さん尽くし”の刺繍なのです。特別な説明文はありませんが、知る人ぞ知るこだわりが詰まっています。
また、雨の日に「差して帰ります」と購入する人が続出しているという傘「DANGER - HIGH VOLTAGE」は1本1万2100円。会場に展示されていた稲妻のような作品を持ち歩けると思えば、お安いものです。
《放電場 227》2009© Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
本展覧会のタイトルの“絶滅”は、杉本さんがご自身のキャリアの終焉も意識してつけたそうです。しかし、最後の部屋には、メーカーと3年かけて開発したという人間写真機《CAMERA MAN》(自身の目をシャッター、網膜をフィルムに見立てた作品)が披露されるなど、まだまだ新しいものを創造したい、という杉本さんの意欲にあふれた空間でした。
《CAMERA MAN》2026© Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
なお、冒頭でご紹介した「ちょいとまて 注意一秒けが一生…」の一句は、この《CAMERA MAN》の手前にある黄色い作品に添えられています。ぜひ会場で探してみてください。
<開催概要>
『杉本博司 絶滅写真』
会期:〜9月13日(日)※月曜日は、休館
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー(東京都千代田区北の丸公園3-1)
開館時間:10時〜17時(最終入場16時30分)
※金曜・土曜は10時〜20時(最終入場19時30分)
