世界を席巻した「りくりゅう」こと三浦璃来・木原龍一ペア。その圧倒的なスピードと優雅さを切り取った一枚の写真は、異例の注目を集めました。
それがこの一枚。
「Feel the figure skating speed.(フィギュアスケートのスピードを感じて)」というコメントとともに五輪公式のSNSで公開されたこのショット。
そこには、木原選手が片手で三浦選手を持ち上げ、グループ5アクセルラッソーリフトを披露している姿が。背景の観客席は色彩の帯となって流れ、まるで時間そのものが高速で駆け抜けているかのよう。その中央で、2人だけが鮮明な軌道を描いていて、幻想的な仕上がりとなっています。
撮影したのは、ゲッティイメージズで31年のキャリアを誇るベテラン、ジェイミー・スクワイア氏 。13回ものオリンピックを最前線で記録してきた彼が、めざましmediaのインタビューに応じ、“奇跡の一枚”の舞台裏を明かしてくれました。
「りくりゅう」を狙い撃ったワケ
――りくりゅうペアに焦点を当てた理由は何でしょうか?
私のスポーツ撮影へのアプローチは、他のすべての写真と同様、美学に集中することです。背景に邪魔な要素がなく、一目で伝わる美しい写真を好みます。
私は以前も三浦・木原ペアを撮影したことがあったので、彼らが氷上のどこで特定の技を繰り出すかを把握していました。そのため、演技中にどのようなショットを撮るか、あらかじめ計画を立てることができたのです。
昨年11月の『スケートアメリカ』で彼らが金メダルを獲得したのを見て、オリンピックでも優勝候補になるだろうと確信していました。そのため、彼らがチャンピオンになると確信して、他の選手よりも少し重点的に彼らを追っていました。
加えて、このペアが滑る時、言葉で説明するのは難しいのですが、何か「特別なもの」を感じます。他の競合相手よりもはるかに滑らかで、洗練されている。ただ見ているだけで「彼らの方が優れている」と分かってしまうのです。ジャンプはより高く、スピンはより精密で、リフトはよりクリーン。彼らの滑りを見るのは、純粋に喜びを感じる体験です 。
――りくりゅうペアの魅力は何でしょうか?
彼らはとにかく他より優れています。ジャンプ、スピン、リフト、すべてがコントロールされています。彼らには「チャンピオンの風格」があるのです。お互いを熟知し、パートナーの動きを察知しているのが分かります。
成功か失敗か。技術と運が呼んだ「奇跡の一枚」

――りくりゅうペアを捉えた象徴的なあの一枚のこだわりを教えてください。
この画像は『パン・ブラー』と呼ばれる技法です。シャッタースピードを落とすと同時に、カメラをスケーターと同じ速度で動かします。スピードを遅くすればするほど、写真全体が完全にブレてしまうリスクが高まるため、非常にテクニカルな手法です。
鍵となるのは、画像の中に一点、鋭いシャープな領域、理想的には顔を維持することです。この画像は、顔にピントが合いつつ、他のすべてがブレているからこそ成功したのです。
正直なところ、このテクニックは一枚も使い物にならない結果に終わることもよくあります。そこには、ちょっとした運も必要です。技術と、世界トップクラスのスケーターというすべての要素が完璧に噛み合った時、得られる結果は最高に満足のいくものになります。
この「パン・ブラー」という技法で最高のスケーターということを表現したかったのですが、他のペアではこれほどうまくいかなかったかもしれません。彼らだけが持つ特別な「何か」があったからです。
――なぜこの写真がこれほどまでに人々を惹きつけたと分析しますか?
公式アカウントに選ばれたことは光栄です。選出された理由は、おそらく『他とは違っていたから』ではないでしょうか。私たちは普段、似たようなスケートの写真を見慣れています。しかしあの画像は、優雅さとスピード、そして世界最高のペアスケーターの独特な姿を融合させています。
視聴者が見慣れているものとは違う、ユニークで異なるものを創り出すためにリスクを取ることは良いことだと思います。標準的なスケート写真よりも、少し興味深いものになったと感じています。
――世界中で大きな注目を集めましたが、周囲の反応はいかがでしたか?
オリンピック期間中、何人もの同僚から呼び止められ、その写真がいかに広く使われているかを見せられました。彼らはその写真が掲載されたウェブサイトや記事を教えてくれました。
なぜ特定の画像が世界の特定の場所でこれほどまでに支持されるのか、理解するのは難しいことです。ですが、人々がそれを喜んでくれるのは非常に刺激になります。何が画像を「バズらせる」のかは分かりませんが、私たちが撮った写真が人々に影響を与えていると知ることは、とても満足感があり楽しいことです。現場にいなかった人々に、そのイベントがどのようなものだったかを独自の視点で伝える一つの方法でもありますから。
