猪狩さんにとっては事務所の先輩でもある主演・木村拓哉さん。現場ではどのように対峙したのか。以前から気になっていたという「“第2の木村拓哉”が生まれない理由」を目の当たりにしたようで…。

──撮影現場はどのような雰囲気でしたか?

基本的にはピリピリとした現場でした。最初の頃は少しまろやかな空気感があったんです。スタッフさんに振られてギャグとかもやって、現場を盛り上げようとしていましたが、撮影が進むにつれて厳しさが増していきました。

──現場での主演・木村拓哉さんの姿は、猪狩さんの目にどのように映りましたか?

スターであり、座長であり、事務所の先輩でもあるので、背中から学べるものは全部学ぼうという気持ちで現場に入りました。木村さんの立ち振る舞いをこんなに近くで学べる場所はきっと二度とないですし、この機会を無駄にはできないですよね。

これはずっと考えていることなのですが、なぜ“第二の木村拓哉”が生まれないのかって気になりませんか?厳密に言うと“第一の木村拓哉”もいないんですけど。これだけ木村さんになりたいと思う人はたくさんいるのに、なんで誰も木村さんになれないんだろう、と。そういう目線で、木村さんの裏も表も見られる機会は貴重だなと感じていました。

映画『教場』で木村拓哉さんが演じる風間公親

ご一緒して思ったのは、一つひとつの所作、歩き方、間(ま)の取り方、声帯に至るまで、人と全然違うということ。木村さんの声は低いけど通るし、言葉と言葉の間に「えっと」「あー」とは言わないし、すべてが洗練されているんです。

その完成度を若い頃から保っているということは先天的なものなんだろうし、真似してできるものではないですね。きっと、真似すればするほど、木村さんからは遠ざかっていくんだろうな、と気づかされました。

僕自身、木村さんのことは大好きですけど、タレントとしての方向性は違うと思っているので、そのことに気づいてもショックは受けていません。でも、アイコンになれるのは木村さん故なんだと知れましたし、改めて尊敬しました。

猪狩蒼弥「暑い」「つらい」という感情を共有した第205期のメンバーは「かけがえのない仲間」

──撮影の合間に、お芝居のアドバイスをもらうなど、会話をすることはありましたか?

アドバイスをいただくことはなかったです。こちらから気に入られようとするのも違うと思ったので、できるだけフラットに現場にいるようにしていました。

でも、木村さんが僕のことを可愛がって、イジってくださることも多くて。雑談もさせていただきましたし、すごくうれしかったです。

──木村さんが現場に入ると、現場の空気がよりピリッとするという話も聞きます。

木村さんが入ると現場が締まりますね。スタッフさんも含めて締まりますし、その空気感に僕らも引っ張られていました。

映画『教場』で木村拓哉さんが演じる風間公親

ただ、木村さんを“テレビの向こう側の人”として見てしまって「うわっ!」と、ちょっとテンションが上がる自分たちもいて。同じ作品に出演するうえで、そんな感覚ではいけないんですけど。でも、それくらい偉大な方だから。

あとは、男女関係なく、この世界にいるからこそのリスペクトをみんな持っていて。「やっぱカッコいいよね」という話もたくさんしましたし、いろんな思いが混じった緊張感があった気がします。

──クラスメイトの皆さんとの関わりで印象に残っていることを聞かせてください。

毎日かなり長い時間を共にしていたので、撮影が進むにつれて共通言語も増えて、関係性は深まっていました。撮影から離れても、次に会ったときに「何してた?」という話をすることもあって、友だちのような関係になれたと思います。

実際の警察学校も、年齢や出自がバラバラな人たちが集まって、卒業後はそれぞれ別の場所に配属されると聞きますし、それは芸能に携わる僕たちと同じなんですよね。ただ、一緒に時間を過ごしていると「暑い」「つらい」とか感情は似てくるから。その苦労を共有できた仲間の存在は、かけがえがないものだなと感じています。

映画『教場 Reunion』ビジュアル

──本当の学校生活のようだったんですね。

そうですね。作品入っていて、ここまでパーソナルな部分を話すことって今までなかった気がします。それくらい仲が深まったのかな、と。

あと、同世代でこれだけの人が集まることもあまりないですよね。しかも、ただの学園ものじゃなく、警察学校という社会人の集まりの物語ですし。それは、これから芸能界で頑張っていこうと思っている僕らに少し重なる部分もあって、お互いの成長などを共有できる仲間に出会えたなと思っています。

──最後に前後編を通した見どころを聞かせてください。

一番見ていただきたいのは、「警察学校とはなんなのか」ということ。できるだけリアルを求めて作られているので、その空気をまずは感じていただきたいです。

渡部としては、キーマンではないですし、物語を動かす存在ではないですが、要所に出てきて物語に絡んでいきます。なので…頑張っている僕を見てください(笑)。

映画『教場』で猪狩蒼弥さんが演じる渡部流

頑張ったと言えば、これは僕だけじゃなくみんな言うと思いますが、訓練のシーンは緊張感がありますし、一番頑張ったシーンなので注目してほしいです。

皆さん俳優だから演技はそんなに苦労しないけど、個性を消すように求められることってないですから、難しいんですよね。ほかの人より優れていることを証明しながら生きてきていますから。

そういったなかで、“合わせる”ということに本気で向き合った半年間の集大成を見届けていただけたらうれしいです。