本作が初共演の板垣さんと中村さん。実際に会う前はお互いにどんな人だと思っていたのでしょうか?アフレコ現場での印象的だったことを聞いてみると…?

 中村倫也「板垣くんはそっと甘いものを差し入れてくれました」

――お互いが共演相手と聞いた時の感想は?

中村:「板垣くんはどんな声なのだろう?」と思って、動画を見た記憶があります。

板垣:声優としての中村さんを、映画『アラジン』の日本語吹き替えなどでも拝見していたので、その中村さんとご一緒するというのは嬉しさもありつつ緊張しました。

中村:声優の仕事は数えるぐらいしかやっていないから、全然慣れていないよ。「何とかなる」と思ってどの現場にも行っている。

板垣:そんな中村さんの雰囲気に助けられました。

左から)板垣李光人、中村倫也

――改めて、初共演の感想を教えてください。

板垣:「本当に初めましてなのかな?」と思うぐらい、誰に対してもフラットな目線と気持ちでいらっしゃる方だなと。そこが素敵だと思いましたし、自分にもそう接してくださるので、アフレコでも緊張せずにいられました。

中村:ずっと「かわいい子だな」と思っていましたが、実際に会ってみたら、「かわいくていい子」だと分かりました。この仕事には、場の空気を自分のものにするタイプと、その場の様子を探って合わせるタイプがいると思っていて。板垣くんは後者のタイプだと思いましたし、そういうところが田丸に似ている気がしています。きっと、生きていくうえで他人に邪魔されない時間が必要で、自分1人だけの密かな楽しみを持っていて、奥にはブレないものがある。

板垣:小さい時から妄想したり、1人遊びが好きだったりしたので、当たっていると思います(笑)。

板垣李光人

――アフレコで一緒になったのは1日だけとのことですが、印象に残ったことはありますか?

中村:お互いが疲れてきた夕方ぐらいに、板垣くんはそっと甘いものを差し入れしてくれました。「優しい子なんだな」と思いました。

板垣:僕もちょうど糖分を欲している時間帯だったので、「よろしければ、一緒にどうぞ」と。横にそっと置いておきました(笑)。

中村:きっとヤツも欲しいだろうなと(笑)。

板垣: 1日だけでしたが、中村さんが「吉敷」として存在してくださったので、その後に1人でアフレコをしていても、ちゃんと隣にいる感覚が残っていました。ご一緒できてありがたかったです。

中村倫也

――普段出演する実写作品と違う点はありましたか?

板垣:台本の作り自体から全く違っていました。普段は自分のセリフにマーキングをしませんが、アフレコの場合はしていないと追いきれなくて。セリフだけでなく、息づかいだけという箇所もあるので、秒数とト書きとセリフを追いながら読まないといけなくて大変でした。

中村:初めてアニメの台本を見た時は、意味が分からなかった(笑)。でも、板垣くんはセリフを覚えていたよね?

板垣:若干です(笑)。アフレコだと画面と目の前にあるマイクに向かって演技をするので、いかにイマジネーションを膨らませることができるのかが大切です。僕は、実際にペリリュー島を訪れたからこそ想像ができた部分もありました。島の風土、外と洞窟の中の温度差、湿度や森の中の険しさ、そのまま残っている戦車…。でも、海も空もとてもきれいで。田丸は母親あてに「楽園のようなところです」と手紙を書きますが、本当に景色は楽園のようなんです。

中村:僕は、人類史の中に出てくる戦争について調べることが好きなのですが、本作に関しては原作を読んだ時点で役作りが完了していました。漫画と映画の両方に共通しているのは、ドキュメンタリーチックで過剰な表現にしないがゆえに、にじみ出てくる生々しい“肌感覚”を大切にしているところ。「何かを表現しよう」と思わずに、吉敷のキャラクターそのままにまっすぐにセリフを吐くということをしていました。

アフレコ現場での微笑ましいエピソード、実写作品とは違う難しさを語ってくれた2人。インタビュー後半では、「もしも田丸と吉敷が現代に生きていたら?」を想像してもらいました。