──仁吉役の沖野晃司さん、佐助役の八代拓さんをはじめ、皆さんとのアフレコでのエピソードを聞かせてください。
みんなで同じように「難しいね」と話していたのは、しゃべり方でした。男性でも一人称は「あたし」だったり、語尾には「~かしらね」がついたり。今、日常では使わない言葉をしゃべるのは難しかったです。彼らにとっては普通のことだから“言ってますよ感”を出してはいけないし、そこはみんなで確認しながら収録していました。
特に理性的でまじめな仁吉を演じた沖野君は、これまで仁吉とは正反対のはっちゃけたキャラクターを演じていることが多かったので、クールにすらすらと説明セリフを発する仁吉役は大変そうだったのが印象に残っています。
山下大輝が思う声優の魅力「何倍も人生が楽しめる」

──山下さんには、本作に限らずアフレコ時のルーティンはありますか?
特にないです。ルーティンを決めてしまうと、それができなかったときに不安になってしまうので。パフォーマンスはいつも、どんなときでも全力を出せることが理想ですね。常に「紙とペンさえあればOK」という状況に自分を置いておきたいなと思っています。
ですから、とにかく台本を読んで役を考えるということしかないかもしれません。ただ、アフレコスタジオに入ったら、その場の雰囲気でお芝居を変えられる臨機応変さも求められるので、ガチガチにお芝居を決め込んでいくことはしないです。頭と心を柔軟にして臨むことは心がけていますね。
──多くの作品に出演されている山下さんが思う、声優の仕事の魅力を教えてください。
なんでもできる、なんにでもなれること。それ故に、何倍も人生が楽しめていると思います。
演じるキャラクターそれぞれに人生があって、僕は声を通してそのキャラクターの人生を疑似体験している感覚があって。これまで演じてきたキャラクターたちには、本当にいろいろな景色を見せてもらいました。
例えば、魔法が使えたり、人間じゃないものにもなれたりして。『しゃばけ』は時代考証もしっかりしているので江戸時代の暮らしも体験できました。そうやって自分の人生にプラスして、キャラクターたちの人生も歩めているので、心が豊かになりますし、すごく幸せに感じています。
──最後に『しゃばけ』の見どころを聞かせてください。
一太郎の周りで起きる出来事がメインで、彼の成長物語なのですが、妖たちとの心と心のぶつかり合いや、壁にぶつかったときにどうやって解決していくかということがステキに描かれている作品です。時代ものとしても、ファンタジーものとしても、ミステリーものとしても楽しめるので、ご家族皆さんでご覧ください。
そして、「ここに感動した」など心が動いたポイントが“見どころ”だと思うので、自分だけの見どころを見つけて楽しんでもらえたらうれしいです。

撮影:河井彩美