魚雷や焼夷弾(しょういだん)、零戦も含めてまだ開発の途中なんですよ。日本がポツダム宣言を受け入れざるを得なかったのは原子爆弾(の投下)が要因でしたが、原爆ができるまで世界で戦ってきた、開発途上の爆弾と一体となって突っ込むしかなかった若者たちの遺影が並んでいる。この戦闘機で飛んだのかとか、この爆弾で敵を狙ったのかなど様々なことを考えさせられました。
中山優馬 大先輩・錦織一清は「カッコいい大人」
――大阪公演のトークイベントで錦織さんが、「クライマックスで飛び立つシーンの優馬は英霊と同じ目をしていた」とコメントしたそうですね。
ニッキさんが言うならそうなんかなって…、話半分で聞いています(笑)。
だけど、僕は英霊の方たちと同じ目をして飛び立とうという気合いを1 ミリも持っていませんし、俳優がそこを目指すのはすごく危険なことだと思うんですよ。
とはいえ、俳優としてのイマジネーションや多くの資料から得たもので作った芝居に対して、ニッキさんにそんなふうに感じていただけたのはありがたいことです。

――錦織さんの演出を受けるのは初めてだそうですが、演出家としての印象を聞かせてください。
面白いですし、肝が据わっているなと感じます。ニッキさんの演出はダメ出しをせず、俳優が選択したものに肉づけをしていく方法。海外と違い、日本にはコーチングシステムがまだ定着してないので、俳優が演技プランを構築することに積極的でない瞬間もありますけど、そんなときでもニッキさんは我慢強く待ってくださるんです。
「ニッキさんが思い描いている“ドラマ”が起きていないシーンがありますけど、どうして役者にダメを出さないんですか?」とお聞きしたことがあって、返ってきたのは「ダメ出しをしたり、ディレクションをしたりすると演出家だけの芝居になってしまうから。そこを目指すのではなく、俳優自身が生み出すとてつもないパワーを信じている」という言葉でした。

一人の俳優として伸び伸びやらせてもらっていて、僕が選択した芝居に対して「こういう言い回しにしてもいいよ」などと肉付けをしてくださることで、役柄に対しての理解がより深まっていく。演劇の知識がすごくて、心の底から演劇を愛している方が演出してくださるので、僕たち俳優も信頼してついていくことができています。