木曜劇場『波うららかに、めおと日和』の宋ハナプロデューサーと演出の平野眞監督に、ドラマ制作の裏側や、作品に込めた思いなどを聞きました。

『ショムニ』『HERO』『空から降る一億の星』『やまとなでしこ』『ラスト♡シンデレラ』『5→9〜私に恋したお坊さん〜』『監察医 朝顔』『PICU 小児集中治療室』(以上、フジテレビ)など、昭和、平成、令和の名だたるドラマの演出を手がけてきた平野監督。

現在、昭和11年を舞台に交際ゼロ日で結婚した夫婦の、ぎこちなくも和やかな新婚生活を描く『波うららかに、めおと日和』の演出を務めています。

同作で、恋愛に不慣れな新妻・江端なつ美を演じる芳根京子さんとは、『ラスト♡シンデレラ』以来、12年ぶりのタッグ。そこで、芳根さんの印象や魅力について聞きました。

宋プロデューサーには、昭和初期が設定の作品を令和の今、映像化する意義を尋ねました。

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昭和11年が舞台の『波うららかに、めおと日和』を令和につくる意義

――平野監督は芳根さんとは『ラスト♡シンデレラ』(2013年)以来、実に12年ぶりのお仕事となりますね。

平野:そうですね。芳根くんは、遠藤章造くんと大塚寧々さんの娘役でした。毎話、出演があったわけではなく、親に反抗するシーンを撮ったくらいでしたけど、その後『表参道高校合唱部!』(TBS/2015年)などに出られて、「あのコがこのコなんだ!」と驚いた記憶があります。

『波うららかに、めおと日和』第6話

――『ラスト〜』は芳根さんのデビュー作ということもあり、『めおと日和』の公式サイトでも監督への感謝と思い入れあふれるコメントを寄せていました。

平野:いやいや、僕のことなんかそんなに覚えてないでしょう(笑)。でも、将来、主役になる人だなとは思っていましたね。当時からすでにほかの人とは違っていたというか。自分が与えられた役にしっかり徹していて、セリフに追われていないところとか。

(セリフを)「言わなければいけない」みたいな雰囲気は、こっちからは見ていてわかるんですよ。彼女にはそれがなかった。

実は、黙っている芝居が一番難しいくらいで。でも、彼女はただ歩いているだけでも、母親役の大塚寧々さんの子どもである、ということをちゃんと理解して動いていた。そこはもう感覚的なものというか、センスですよね。

かつてドラマは「スイッチングで編集が決まってしまっていた」

――監督は、1990年代から現代まで、時代を超えて多数のドラマをつくっていますが、令和の今、ドラマづくりにどんなことを感じていますか?

平野:今から30年ほど前、ドラマの撮影において「マルチ(カメラ撮影)」と言われる手法があって、そこでは「スイッチャー」と呼ばれる、カメラで撮った画面をスイッチング(切り替え)する人の存在が大きかったんです。でも、このやり方だと(映像の)編集が現場で決まってしまって。

――どういうことでしょう。

平野:まず、撮影現場には舞台に対してカメラが5台くらいあるわけです。昔のドラマを例に挙げると『寺内貫太郎一家』(TBS/1974年)って、ちゃぶ台の正面を絶対に空けてるじゃないですか。人が座らない。

それはひとえに撮りやすいからなんですけど、ちゃぶ台の反対側にはカメラが5台ぐらい並んで、それぞれがそれぞれの画(え)を撮影しているんです。そして本番時に役者さんがセリフを言うたびにサブ(・コントロールルーム=副調整室)で映像をスイッチングしていくのですが、マルチだとその切り替えがそのまま(ドラマ全体における)編集点になってしまうんですよ。

今はもうそんなことはしていなくて、対象を囲むようにカメラを配置し、まずこの方向から撮る、次はこの方向から撮る、という撮り方が主流なんです。これだと編集をするときに、こちらで自由に編集点が決められるという利点があります。

もちろんその分、編集に時間はかかるけど、映像素材が多いと取捨選択の余地が生まれるから、つくり手としては圧倒的にそちらのほうがいい。僕は若い頃からずっとスイッチングで編集が決まってしまうのがもったいないと思っていて。

――ドラマの流れがスイッチャーさん次第、みたいなところがあったということでしょうか?

平野:そうです。そうなってしまわざるを得なかった。なので、スイッチャーが失敗するともう1回頭からやり直し、みたいなことが往々にしてありました。要するにワンシーン・ワンロールですよね。今からしたらとても贅沢な撮り方ですが。