BE:FIRST、MAZZEL、HANAなど、BMSGが主催するオーディション企画からデビューしたアーティストが大きな話題となっています。才能を見出して育てる側のSKY-HIさんの「育成」に対する思い、大切にしていることとは?

SKY-HI「いくつになっても、ここから本当の自分になれる」

――『THE FIRST』から始まり、最近では『No No Girls』といったBMSGが主催するオーディション企画が注目されています。ティーンの才能を見出す際、まずどこを見るのでしょうか?

どこを見るか、どこを発芽させたいのか、どちらにも共通するかもしれませんが、「何者かになろうとしないでいい」というか。なるべく早いうちに、「何者かになろう」とするんじゃなくて、「自分であろうとする気持ち」を育ててあげたい。実際にそれができている、その気持ちのままでいられる方を眩しく感じることが多いですね。

もちろん、クオリティという意味で、絶対的な基礎能力は必要です。ちゃんと血や汗がにじむような努力をして、基礎・土台を固めてもらうことと、「ちゃんと自分であろうとするところ」は同時に必要なんです。大人になればなるほど「服の着方を覚えちゃう」というか、その場に応じた立ち居振る舞いができてしまう。みんなスタートはだいたい「アーティストになりたい!」みたいな感じだと思いますが、「アーティストになりたい人」がしがちな思想や行い、あるべき姿に勝手に流れていっちゃうのが、悲しいなと思っています。

子どもの頃の、3~5歳の時のバイブスを持ち続けられていたら、それは素敵なことだし。それこそ、オーディションでRUIを見た時には「宝物が出てきた」って、すごく感じたんですよね。

――『THE FIRST』の時に、サンダルで踊っていたRUIさんが…。(※疑似プロ審査の練習の際に、前日に洗った靴が乾かずにサンダルで踊り、参加者たちから注意を受けた出来事)

そういうところもあるけれど(笑)。それも含めて、初対面や書類の段階から感じたものがあったなと、昨日のことのように覚えています。でも、服の着方を覚えたとしても、もう一度服の脱ぎ方を思い出してしまえばいいんです。いくつになっても、ここから本当の自分になれると思いますし。

そういう意味で、すごくうれしかったことがあって。森三中の大島(美幸)さんが、 「女芸人として立ち振る舞わなければ」と思ってやってきたけれど、『THE FIRST』を見ていたら「そうでなくてもいいんだ、自分は自分でいいんだ」と思えたって。そこからは、「すごく人生が楽しい」とおっしゃっていて。本当に恐縮ですが、それを聞いてすごくうれしかったです。

大事にしたいのはそういうところだし、才能について思うのもそういうところ。もちろん、礼儀は大切で、いつまでも子どものままでいていいわけでは当然ないので。年齢を重ねるにつれて、社会意識を育んでほしいとは当然思いますが、それとまた別の話で「今からこういうことを表現する」となった時に、ちゃんと“5歳時の感覚”が残せている人というのが、素敵だなと思うし、それを育みたいなとも思います。

――事業家、アーティスト、プロデューサーと、多忙な日々だと思いますが、どのように時間を使い分けているのでしょうか?

常に同時進行ですね。昔からそうですが、ラッパーとして表に出る自分・アイドルとして歌って踊って表に出る自分・プライベートの自分が区切りなくきてしまったので、「ON・OFF」の切り替えみたいなものはなくても平気になってしまいました(笑)。幸か不幸か、本名でデビューをすると、仕事とプライベートの区切りがなくなってしまうんですよね。自分もそれで苦しんだので、みんなには勧めないようにしています。

――プライベートでリラックスできる時間はありますか?

マンガを読むことでしょうか。マンガって週刊連載なので、気が付くと何週か空いちゃうんです。読めていないと気付いた時に「今、自分のキャパがヤバいんだな」と感じるので、「ちゃんとマンガを読む」ということが、忙しさの指標のひとつになっています。

でも、自分で選んだことだし、大変だけれど全部楽しい。経営実務も、この『GOTH』の現場も、BE:FIRSTの現場もMAZZELの現場もHANAの現場も、ソロアーティストと過ごす時間も、誰かとサウナにいる時間も。アーティストとして曲を作る時間も、ステージに立つ時間も全部楽しい。自分にとっては、仕事が仕事の切り替え方法になっているんだと思います。

撮影:今井裕治