<杉咲花 コメント>
――ついにラスト2回の放送となりました。今の心境を聞かせてください。
さみしくてさみしくて。
あと90話分くらい撮影していたい気持ちです。
――周囲の反応や反響はいかがですか。杉咲さんに届いたメッセージで、うれしかったのはどんなものがありますか?
周囲の反響でいうと、同業者の方々からこんなにも感想のご連絡をいただいたのは、初めての経験でした。こんなドラマに関わりたいと感じられるような作品作りができたら…という自分たちの密かな夢が、少し輪郭を成したような気がしてぐっときてしまいます。
――ミヤビの日記や血管吻合(ふんごう)も杉咲さんが担っているとのこと。休憩中や自宅でも何時間も没頭してしまうため、周囲も一度は止めたと聞いています。どのような思いから取り組まれたのですか?
負けず嫌いだからです(笑)。
去年の12月に監修の石川久先生から初めて縫合を教わった時、全然できなくて途方に暮れました。できないことを突きつけられた瞬間、この先カメラの前に立っても自分は医者じゃないと思ってしまう気がしたんです。目の前にあるたったひとつのことだけでもできるようになったら、川内ミヤビとして存在する自信になる気がして。毎日縫う練習をしました。
――これまでの放送で、好きなシーン、印象に残ったセリフがあれば教えてください。
数えきれないほどありますが、第9話のラスト、医局での三瓶先生とのやりとりが忘れられません。現場にいた全スタッフが大きな輪になってリハーサルを見つめ、各部署がアイデアと体力を振り絞って長回しに臨みました。自分でも信じられないほど緊張しましたが、俳優がどんな動きをしても絶対に捉えてやるという熱量で重たいカメラを担ぎ続け、どこが切り取られても最高に美しい光をセッティングし、ひとつの吐息も録りこぼさないほどの気概で音を拾い、祈るように見守ってくれているスタッフさんに囲まれながら行われた撮影。いつまでもああしていたい14分でした。
――杉咲さんのアイデア、提案で実現したシーンや撮影方法などもあったと聞いています(第2話のサッカー少年・亮介とミヤビが向き合い、高架下でサッカーボールを蹴り合う長回しのシーンなど)。
高架下のシーンでは、亮介が自分の状態や気持ちをとても繊細に実感する重要なシーンでした。ゲスト出演というただでさえ緊張する環境のなかで、そこにいる人たちを信じて心を裸にしていく時間はとてつもないプレッシャーに襲われるはずで。少しでもフラットにその瞬間を生きられるために、Yuki監督とアイデアを出し合って、30分間の長回しをすることが決まりました。
第2話に限らずですが、1つのシーンにおいて1台のカメラでさまざまなアングルから撮影を重ねていくなかで、どのような撮り順で進めていくかについてはかなり話し合いをしました。自分が経験してきた現場は、どんなシーンであっても一発目は主人公から撮っていくことが多かったんです。だけど、主人公だけが輝いていても良い作品にはならないと思っていて。だからこそ、そのシーンにおいて何が一番重要で誰を輝かせたいのかを密に考えながら、鮮度のある表情を大切に納めていくことについて、監督や米田プロデューサー、若葉さんと徹底的に話し合いを重ねました。
――脚本作りにも参加したとのことですが、どんな打ち合わせを重ね、どのように杉咲さんの思いが反映されているのでしょうか?
打ち合わせは主に米田プロデューサー、Yuki監督、若葉さんの4人で行うことが多かったのですが、特にそれぞれの役のセリフにおいて適正な言葉を精査すること、伝えたいことを言語だけに頼らず表現する方法を探すことに注力していきました。
例えばたった一言のセリフや語尾、“てにをは”についての精査に1時間以上かかることも日常的で、決定的な情報を敢えてセリフにしないことに関しては緊張が走る瞬間もありました。ですが説明しすぎないということは、受け手を信じるということで。作劇上の都合で出口を誘導するのではなく、それぞれの役がひとりの人間として気持ちの筋を通すことを最優先するため、さまざまな視点からの擦り合わせを心がけていました。
――SNS上では、杉咲さんのナチュラルな演技に反響が大きく、また、食事のシーンが印象的と話題です。反響については、どう感じていますか?
やはりみんなで時間をかけて話し合ってきたことについて、視聴者の方々がしっかりキャッチしてくださっていることがすごく嬉しくて。意図していなかったところでも、その人だけの感性で受け止めて、その人だけの物語が育まれていっていることが最高に嬉しいです。
――撮影現場での思い出深いエピソードを教えてください。
みんなで集まってオンエアを見届けたり、スタジオの前室でお米を炊いて食卓を囲むような時間を過ごしたり、キャリアや部署を問わず、くだらない話でゲラゲラと笑っていたり。時にはすれ違いが起きて、気まずい空気が流れた場面もありました(笑)。だけどそれは、真剣だったから。 毎日を一緒に過ごしていると、いろんないろんなことが起きるけど、喜びも涙も、好きなお菓子もみんなで半分こすることができたすべての瞬間が宝物です。
――杉咲さんは撮影が始まる前、全スタッフの顔と名前を覚えられるようスタッフ一覧を作ったり、現場にパーカーをプレゼントして一人ひとりの名前を直筆で添えるなど『アンメット』に関わる方々に深い愛情と熱意をかけているのがうかがえます。
感謝とか愛情は、言葉や態度でなるべく伝えていきたくて。
軽やかに伝えることって難しいし、自分にできることも少ないですが、作品に関わるひとりひとりが大切で、誰もが欠けてはいけない存在であることをみんなで共有できたら、現場が“行かなきゃいけない場所”じゃなくて、“明日も行きたい場所”になるんじゃないかなって。
またみんなに会いたいです。
――第10話や今後の展開の見どころ、視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
『アンメット』が大好きでたまらないみんなと力の限りを尽くした自信作です。是非お家のテレビで見てください。
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