アメリカでの公開から遅れること約8カ月…3月29日から日本でも公開が始まった映画『オッペンハイマー』。
都内の映画館ではにぎわいをみせていました。
取材スタッフ:
たくさんのお客さんでいっぱいです。500席以上がほぼ埋まっています。
アメリカでは2023年7月に公開され大ヒット。
今年のアカデミー賞では、作品賞など最多7部門を受賞しました。
しかし、日本での公開はなかなか決まりませんでした。
配給会社「日本人にとって特別な意味を持つ」被爆地 広島・長崎での反応は?
去年12月、日本での公開が決定した際には、配給会社が異例とも言える声明を発表しました。
配給会社ビターズ・エンド(日本):
本作が扱う題材が、私たち日本人にとって非常に重要かつ特別な意味を持つものであるため、さまざまな議論と検討の結果、日本公開を決定いたしました。
公開決定までに紆余(うよ)曲折あったことを明かしました。
その理由は、今作が原子爆弾を開発した科学者「オッペンハイマー」を描いていることです。
原爆投下によってアメリカでたたえられた「オッペンハイマー」。
その一方で、原爆被害の惨状を知り、苦悩を深めていく姿が描かれています。
唯一の戦争被爆国として、日本では特別な意味を持つ“原爆爆弾”の開発者を描いた作品。
一般公開に先立って試写会が行われた、被爆地・広島と長崎での反応は…。
長崎県被爆者手帳友の会 朝長万左男会長:
オッペンハイマーのセリフの中に何十か所も被爆の実相にショックを受けたことが込められていた。あれで僕は十分だったと思う。
元広島市長 平岡敬元さん:
広島の立場としては、もっと恐ろしさが描かれていてもよかったのではないかなという気がします。
被爆国側から見た、映画「オッペンハイマー」。
“原爆”の開発者を描いた今作品を日本人の観客はどう感じたのでしょうか?
映画を見た人:
つらいってなりました…。オッペンハイマーの葛藤みたいなものも感じましたし、見終わってすごいものを見てしまったなと感じました。
映画を見た人:
賛否両論ある内容だし、簡単に面白いとは言えないんですけど、見てよかったなって思います。
映画を見た人:
「日本」とか「長崎」、「広島」の単語が出てきたときに血がぶわって起こるようなそんな気持ちになった。それでも(オッペンハイマーが)一人の人間だったんだなと。
作品を見た日本人の心に複雑な感情を巻き起こしている「オッペンハイマー」。
なぜ、日本では公開が遅れたのでしょうか?そして世界的に評価されているわけとは?
覚悟をもって日本で公開された
映画パーソナリティーの伊藤さとりさんに映画「オッペンハイマー」について解説してもらいました。
伊藤さとりさん:
日本は被爆国ということでアメリカのスタジオサイドも懸念していたと思います。
「これを日本公開したときに、日本の人たちはどういうふうに見るのだろう?」と。
それに対して声を上げたのがミニシアター系の映画をよく手がけている『ビターズ・エンド』という会社で、ビターズ・エンドがどんな映画なのか実際に見て、買い付けをする人たちなどと話し合って、「うちが日本公開をやりましょう」と決めたんです。覚悟をもって映画公開を決断したんですね。
――どうして「オッペンハイマー」は世界的に評価されたのでしょうか?
伊藤さとりさん:
クリストファー・ノーラン監督の手腕というのは皆さんもう知っていて、さらに俳優陣の演技力も素晴らしかったんですが、原作を脚本に落とし込むストーリー構成が見事だったんです。
そして音響ですね。メロディーではなくサウンドとして私たちの心にずんずん入ってくる…。
「オッペンハイマーってどういう感情だったのだろう?」というのも音でも表現している。
さらに映像はモノクロのところが出てくるのですが、新しい特別なフィルムを作っていまして、本当に細かいシワなども映し出されているんです。
クリストファー・ノーラン監督が気を使っていた部分は「没入感」なんですよ。
オッペンハイマーの感情に私たちが没入するように作られていて、オッペンハイマーがどんな思いで開発に挑んでいったのか、どんなときに自分の感情が揺れたのかということを全て「視点」として描いている。オッペンハイマーの頭の中も映像として表現している。
全体的な総合的な評価で素晴らしいということでアカデミー賞を取ったんだと思います。
(『めざまし8』2024年4月4日放送より)
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