──まずは続編の話を聞いたときの心境を聞かせてください。

前作をやっていたとき、何か事件が起きるわけではなく、日常の細かいことにこだわって作られた地味目なドラマだと思っていて（笑）。だから、視聴者の方からどんな反応が返ってくるのか掴めない感じだったんです。でも、いろいろな方に愛されているという話を聞いて、良かったなと思っていました。

ただ、続編が作られるとは思っていなかったので、今回のお話を聞いたときは「えっ？」という感じで。もちろん、うれしい意味ではありますが…さらに、映画にもなると聞いて「大丈夫！？」と（笑）。

船は出てしまいましたので、いいものにすべく撮影に臨んでいます。

──そういった前作に対する反響はどのように受け取っていましたか？

面白いドラマだとは思うのですが、僕としては当初地味な印象を受けていたので、好意的な意見を多くいただけていたことが意外でした。

ハリウッド映画やラブコメといったヒットする題材がたくさんあるなかで、こういう日常を題材にしたドラマが皆さんに喜んでもらえるということは、テレビ界にとってはいい発見だったのではと思っています。

何よりも脚本・監督を務めている山口（雅俊）さんの脚本が面白くて、作り方が丁寧なので、それが皆さんに評価していただけたんじゃないでしょうか。

──吉田さんから見て、山口監督が作り出す作品の魅力はどこでしょうか？

人はそれぞれ“人に知られたくないこと”や“これを言ったら恥ずかしいんじゃないかと思うこと”を抱えていると思うんです。山口監督の作品は、そういった、実はみんなが抱えている悩みのようなものを優しくえぐり出す感じがあって。「そうそう。私もこの悩み持ってた」と思わせる表現がうまいですよね。

あとは脚本も本当に面白くて。人としゃべるとき、理路整然としゃべれないじゃないですか。“てにをは”を間違えて使っていたり、途中で脈絡がなくなったり。その普通にしゃべっているときの雰囲気でセリフがかかれているので、覚るのは大変なんですけど、監督独特の書き方だなと感じています。

──山口監督は演出も斬新だと前作の取材で話していましたが、今回の撮影はいかがですか？

全部褒め言葉として聞いてほしいのですが…前回よりも、現場が混乱していました（笑）。

脚本は書きあがっていますが、それで台本が完成ではないという大前提がありまして。セリフを覚えて現場に行っても、ほとんど変わるんですよ。

大変なときは当日変更で、しかも「こうしたいんだけど！」と口頭で監督が伝えてくるので、助監督の方に「お願いだから紙に書いてください」と、いつもお願いしていました。

こんなことを言いながら、僕らは前作でこの状況を経験して慣れていますし、むしろ楽しんでいたんですけど、ゲストの方は大変そうでしたね。素敵な演技をされる方ばかりなのに、セリフが変わるので、事前に考えていた演技プランも使えませんから。その場で生まれるものでやっていくしかないんです。

セリフを言うので精一杯という場面も出てきますが、それによって現場が活性化することもありますし、撮影したシーンを画面で見ると意外と良かったりもして。不思議なことが起こる現場でしたね。

──セリフが急に変わったあと、キャストの皆さんはセリフ合わせをするなど、団結してOKカットを重ねていく感じなのでしょうか？

そういったことはまったくなくて（笑）。伊藤家のメンバーは、直前にもらったセリフなのに「いつ覚えた！？」っていうくらい完ぺきに覚えていて、対応力にいつも驚いています。

ただ、皆さんいつも淡々としていますが、セリフを間違えずに全部言い終わったときには、MEGUMIさんが「すごーい」と拍手してくれますね（笑）。