この時代を生きた人たちの日常を淡々と描いているところが魅力

――それぞれが自分の居場所を模索する物語ですが、皆さんが普段感じている“居場所”について聞かせてください。

村井:僕はうちの事務所ですね。居心地がよくてしょうがありません(笑)。

大原:私は舞台やイベントなどに出演したとき、お客様がいるステージこそ私の居場所だと感じましたね。

:私の場合は家族です。昨年、お休みをいただいて実家に帰ったときに、舞台のパンフレットや新聞記事の切り抜きなど家族が飾ってくれているのを見て、自分が元気にお客様の前に立てるのは、家族というかけがえないない場所があるからこそだと感じました。

海宝:僕はミュージカル以外にバンドをやっていたり、ソロでコンサートを開催したりしていますが、なれ合いだけではなく前に進むため、時には厳しい意見も言い合える場にいると、自分の居場所はここだと感じることが多いです。

村井:さっきの僕の発言をなかったことにしてもらっていいですか(笑)。

海宝:いや、事務所が居場所っていいことだと思うよ。

――公演を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

村井:こうの先生が「今後も戦争の話を書く予定があるんですか?」と聞かれ、おっしゃっていたことですが、「そういう話は例えば被爆者の方であるとか、実際に体験された方が伝えていけばいいという考えをもったままでは、その人だけに任せてしまうことになる」と。

「我々は全員、戦争について語る義務と権利があるから、いろいろな人に発信してほしい」という言葉を聞いて、僕たちは戦争を体験していないけれど、作品として世に発信することが自分たちの義務であると念頭におきながら向き合わなければいけないと感じました。

戦争を前面に押し出した作品ではありませんが、戦時中の日本を知っていただくために、真摯な思いをもって舞台に立ちたいと思います。

大原:戦時中のお話ではあるけれども、当時を生きた人たちが現代を生きている私たちと同じように日々の苦難、人間関係での悩みなどに対峙している様子に向き合ってみて、抱えているものはいつの時代でも同じなんだと感じました。

テーマを一言で表現するのは難しいですが、人は何かと戦い、もがき、苦しみながらも前向きに生きている。そんな姿をお届けしたいです。

 

左から)村井良大、大原櫻子、昆夏美、海宝直人

:戦争下が当たり前の中で生きた人たちの日常を決して劇的にではなく、淡々と描いているのがこの作品の魅力だと思います。戦争を題材にしたこれまでの作品とは明らかに違うものを感じているので、その確信した思いを観ていただきたいです。

海宝:原作やアニメを見たとき、登場人物の実在感をすごく感じたんです。当時を生きた人たちが僕たちと同じように悲しんだり、苦しんだり、家族になっていく過程でぶつかる困難、その中にある生々しさを音楽の力も借りながらお届けしたい。

音楽があることでお客様は物語に入り込みやすいと思いますので、そんな部分をたいせつにしながら作品と向き合っていけたらという心境です。

撮影:河井彩美