勘三郎さんが旅立って12年。ともに作品を生み出し、切磋琢磨してきた大竹さんだからこそ抱く特別な思いがあったそうです。

勘三郎さんとの思い出は「明かせないことばかり(笑)」

――今回の番組では、大竹さんの言葉をそのままナレーションとしてとり入れた部分がありました。

哲明さんとは一緒に努力したり、ハラハラしたり、そんな時期をともに過ごしたからこそ余計に思いが重なってしまって、まさちゃんやたかちゃん、そして、なおちゃんとのりちゃんに向けて、拍手をおくるような気持ちで言葉を綴りました。

勘三郎さんは、映像で姿を一瞬見るだけでもハッと息をのむような迫力を感じる方なので、こんなふうに番組をつくってくださり、中村屋の礎である勘三郎さんを代々伝えていってくださるのは友だちとしても嬉しいです。

ナレーションは勘三郎さんの盟友・大竹しのぶが担当

――勘三郎さんの急逝から十三回忌を迎えましたが、どのような思いがありますか?

いただいた今回のナレーション原稿に「2024年、この年ほど勘三郎さんの偉大さを感じたことはありませんでした」という一文があったんですけど、いやいや、「この年ほどではなく、もうずっとだから」と思ったので、そこは変更していただきました。

哲明さんを知っている人…、野田(秀樹)さんや私にしてもそうですけど舞台に立つ人間は皆、十三回忌だからではなく「哲明さんがいてくれたらいいのに」と感じていると思います。

哲明さんに褒められたい、「いい芝居だったね」と言ってもらいたいという願望が常に胸にあって、おそらくそれは私が舞台に立っている間、ずっと思うことじゃないかな。

「八ツ橋」中村七之助

――今だから明かせる、勘三郎さんとのユニークな思い出があれば聞かせてください。

明かせないことばかりです(笑)。でも、いろんなところでベラベラしゃべっていますからね。なんだろう…、奥様の好江ちゃんと3人で海外へ行ったとき、好江ちゃんが「腹筋や背筋をしてごらん」と言ったら、哲明さんも私も全然できなくて。

私はジムも行っていないし、哲明さんもその時期はまったく行ってなくて、それなのに「どうして舞台上で踊ったり、動いたりできるんだ!?」と。

哲明さんってすごく体が硬くて、(前屈の姿勢を再現しながら)これくらいしかできないの(笑)。そんな私たちの姿に好江ちゃんが「じゃあ、何で動けるの!?」と不思議がったら、哲明さんが「俺たちは芝居筋肉がついてるんだよ。だから、そのときに必要な筋肉を稽古で培えばいいんだ」みたいなことを言っていましたね。

――“芝居筋肉”もある意味、天賦の才なんでしょうね。

私の場合はただ、なまけ者なだけなんですけど、哲明さんは稀(まれ)にみる硬さでした(笑)。

映像のみならず、舞台人としても長く第一線で活躍する大竹さん。中村屋ファミリーの奮闘を目の当たりにし、さらに気合いが入ることもあったのだとか。