震災を知らない子どもたちに、わかりやすく伝えていくために作られた絵本。佐藤さんが取材の中で紹介してくれた、あるシーンがあります。

「娘の命を無駄にしたくない」親子で話し合うきっかけに

防災絵本『2人の天使にあったボク』より/企画・監修 日和幼稚園遺族有志の会

絵本には、地震が起きておびえてしまった男の子を、ふたりの女の子が手を取って導いていくような描写が。

佐藤美香さん:
学生たちがこんなふうに表現にしてくれたんだと思って。これを見た時は、うれしいなと思いました。
あの日友達を励まし続けていた愛梨だから、何か起きた時はそっと手を差し伸べて、命が助かる方に進めるように、見えない力で引っ張ってくれるかもしれないなって。
今でも「こっちに行くんだよ」って言っているんじゃないかな。

亡き娘への思いを胸に、佐藤さんは現在、“語り部”として幼稚園や保育園などを訪れ、絵本の読み聞かせ活動にも取り組んでいるといいます。

佐藤美香さん:
私が読み聞かせした子どもたちが「絵本読んでもらったよ」と、おうちで話して。そしたら災害が起きたときに「どうしなきゃいけないよね。じゃあこうしようね」って、親子で話し合うきっかけにもなってくれたらいいなと思いながらやっているんです。

佐藤美香さん:
語り部では愛梨と共に話しているというか。姿形は見えなくとも、私は娘の命を“生かし続けて”あげたいと思っています。
私が語ることによって「愛梨ちゃんっていう子がいたんだな」って思ってもらえる。その時、愛梨がその人の中で一瞬かもしれないけれど生きて、出会わせてあげることができるっていうのかな。
だから、愛梨と共にこれからも伝え続けていくと思っています。

そんな佐藤さんの原動力となっているのは、愛梨さんはもちろん、愛梨さんの妹である次女・珠莉(じゅり)さんの存在も。

これまで成長を見守ってきた次女・珠莉さんは、春からは地元を離れて大学に進学。佐藤さんは、「いろんな学びや経験をして、楽しい大学生活を送ってほしい」と話します。

佐藤美香さん:
2人の娘に支えられながら、今を生きているような気がします。下の子の成長も見られてうれしいし、ありがたい。子どもってね、本当に生きているだけでありがたい存在なの。

最後に、震災から15年を、改めて佐藤さんに振り返ってもらいました。

佐藤美香さん:
この15年って、もちろん下の子の成長を見られるのは幸せなこと。でも、成長を見られていない子の日々っていうのがあって。私にとっては、今を生きている時計と、止まってしまった時計の2つがある状況かな。なかなか一言では言い表せない15年。

日和幼稚園で亡くなった子どもたちの慰霊碑

佐藤美香さん:
いつか必ず愛梨のところに行く日が来るので、「こういうことやったよ」って胸を張って会える日を、今は楽しみにしています。愛梨に「頑張ったね」って褒めてもらえるように、生きていかなきゃなって思っています。