当時6歳の娘・愛梨さんを失った佐藤さん。子どもの命を守りたいという思いから作られた絵本には、愛梨さんの姿も記されていました。
「娘のことを誇りに思いました」絵本に描かれたあの日の娘
佐藤美香さん:
少しでも子どもたちに届けばいいなっていう思いでね。私たちは東日本大震災を経験したから、何か起きたら命を守る行動を取らなきゃいけないと分かってます。
でも、震災を知らない世代がどんどん増えていて。その子どもたちに、何かあったときに命を守れるような行動を取ってほしいっていう思いで作っています。
紙芝居だったり絵本だったり、少しでも身近に感じてもらいやすいもので伝えることを、やれたらいいなと思って作ったものなんです。
災害大国である日本において、震災を知らない世代に、あの日の出来事や命を守るために取るべき行動を、どうやって伝えていくのか。
子供たちにとって手に取りやすいようにと、“絵本”で表現することを決めました。
絵本を見てみると、地震が発生した後のシーンには、男の子がかぶっていた帽子が“海”に向かって風に飛ばされてしまう場面が。
その男の子は帽子を追いかけようとして、海に向かおうとします。
そんな男の子の服を二人の女の子が強く引っ張り、必死に高台に導こうとする様子が描かれています。
佐藤美香さん:
とにかく海に近づかない、より高いところに行ってほしくて。
「避難をしなきゃいけないんだ」って思えるような絵本にしてほしいっていう要望を伝えて、それを少しでも子どもたちに伝わるように学生さんたちが考えてくれて。「この表現だったら子どもたちに分かるかな」って、言葉遣いにすごく気を使って頑張ってくれました。
幼児教育を学ぶ大学生たちと一緒に作ったというこの絵本。
メッセージが子どもにも伝わるように、かわいらしいイラストにわかりやすい表現を添えることを意識して制作。
ストーリーについては学生たちが、佐藤さんの語りを参考にして考えたそうです。
佐藤美香さん:
自分が子どもたちに読み聞かせをすることを想像しながら、作ってくれたのかなって思うんですよね。学生さんたちにとっても考えるきっかけにもなったと思うから、たぶん教壇に立った時に、子どもたちの命を守ってあげなきゃいけないって強く思ってくれたみたいで。
そして絵本の後半は、イラストのタッチと内容が、大きく変化。
リアリティーを感じる絵とともに、東日本大震災について描かれています。
そこには、佐藤さんが他の園児から伝え聞いた、あの日の愛梨さんの様子が表現されていました。
佐藤美香さん:
震災当時、同じバスに乗せられて助かった園児から、「愛梨ちゃんはね、私たちみんな泣いていたけど、愛梨ちゃんだけはたった一人泣かずに私たちのことをずっと励まし続けてくれていたんだよ」ということを聞いたんです。
自分だって怖いはずなのに、頑張ってお友達を励まし続けてくれていたんだと思ったときに、私は娘のことをすごく誇りに思いました。
抱きしめて「よく頑張ったね」って言ってあげたかった。
絵本のあるページに描かれた、バスの中のシーン。
「『だいじょうぶだよ!きっと ママとパパに 会えるよ!』『もう少し がんばろう!』5人の 子どもたちは はげまし合いました」
そこには、女の子が、泣いてしまった子どもたちを、一生懸命に励ましている様子が描かれていました。
佐藤美香さん:
生きていたら、愛梨は今年は大学4年生になる年だからね。どんな子に成長していたかな。どんなふうに育ったかな。
