かわいらしい見た目が愛され、全国各地から人々が『おのくん』に会いに訪れると話す武田さん。実は、多くの人が訪れるのには、もう一つの理由がありました。
『おのくん』に会いに行ったら…お母さんたちのおちゃめな人柄も愛される理由に
震災当時ボランティアとして武田さんがいる集会所に訪れていたことがきっかけで、現在は『おのくん』の活動をサポートをしている新城隼さんが明かしてくれたのは、武田さんたちのおちゃめで温かい人柄です。
新城隼さん:
人が帰りそうになると、「コーヒーでも飲んでいきな」って言ってきて、「じゃあもらいます」って返すと、自分から誘ってるのに、立ち上がるときに「めんどくしぇ」って言ったりとかして。ちょっとした違和感があるけど、お母さんたちを見てると“かわいらしい”みたいなのを感じて。それで「お茶飲んだし帰ろうかな」と思ったら今度はお菓子が出てくる。
実は、お母さんたちの口癖「めんどくしぇ」は、おのくんの名字にもなっており、本名は『めんどくしぇ おのくん』。そんな言葉が表す武田さんたちの温かくもおちゃめな人柄に、訪れた人は魅了されていくといいます。
新城隼さん:
みんな『おのくん』を見て(どれにするか)悩んで。そこで武田さんたちが「お茶でも飲む?」って言って出てきて、しゃべって。普通買って終わりですぐ帰ると思うんです。『おのくん』はやっぱり武田さんたちのキャラクターとここで話をしてコミュニティを作っているってところが大きいのかなと思ってます。
『おのくん』に会うために全国から人々が集会所を訪れることで、ぬいぐるみのかわいらしさだけでなく、武田さんたちのキャラクターもあり、さらに人を呼び込むように。
当時、「何かに集中したい」という思いで始まった『おのくん』ですが、いつしか多くの人との“つながり”を生むものになっていました。
そんな『おのくん』を一つ一つ作り続けていた武田さんたちは当初、仮設住宅がなくなるときに活動を終わらせようと考えていました。しかし、次第に考えが変わっていったといいます。
武田文子さん:
こんなに続けるつもりはなかったんだけどね。「売れなくなったらもう辞めるね」っていう話で始まったのよ。ところが、開いてみたらずっと仮設に人が寄ってきて。「辞めれないわ。これは」って。じゃあやっていこうかって。
「『おのくん』を通して生まれた“つながり”を断ちたくない」と、活動を続けることにした武田さん。仮設住宅の集会所から陸前小野駅の近くに拠点を移し、震災から15年たった今も、一つ一つ丁寧に『おのくん』を作り続けています。
武田さんたちは、『おのくん』を手にして連れて帰ってくれた人たちを、“里親”と呼んでいます。
いま、『おのくん』の“里親”家族は、世界で34万人以上に。
さらに、『世界防災フォーラム』のマスコットキャラクターに就任し、防災についてのイベントを楽しく盛り上げたり、『おのくん』の“里親”同士が交流する“里親会”が行われたりと、そのつながりはさらに広がっているといいます。
武田さんに、今もプレハブを閉めることなく毎日活動をしている理由を、改めて伺うと…
武田文子さん:
わざわざ来て、休みで閉まってたらかわいそうでしょ。お金かけて遠くから来るんだもん。意外と大雨とか大雪のときは「今日来ないよね、まさか」と思うけど、必ず一人は来るんだね。そういうの出くわすからやっぱり閉めるわけにはいかないね。
最初に作り始めてから、ほとんど休みなく『おのくん』を作り続けてきた武田さん。これまでの日々をこう振り返ります。
武田文子さん:
人のつながりで、あっという間に過ぎちゃったって感じ。
難しいことはなんにも考えてないけどね。集まったら「ご飯食べよう、じゃあおしゃべりしよう」みたいな。それだけ。15年も経ってるのにね(笑)
そう笑顔で答えてくれた武田さん。この日も、訪れた人を温かく迎えながら、『おのくん』を通して“人とのつながり”を紡いでいました。
