『写真の力を信じて』をテーマに、スタジオでは写真展を開催している佐藤さん。そこには佐藤さんにとって、思い入れの強い一枚が飾られています。
「レンズを向けてごめんなさい」紡がれた言葉たち
佐藤さんの写真展では、津波が町を襲っていく様子やその後の町の姿を展示することで、津波の恐ろしさを伝えています。
そこには、とりわけ訪れた人が目を止めるという、1枚の写真があります。
その写真に添えられた佐藤さんの言葉は、
「レンズを向けてごめんなさい」
写されているのは、がれきに囲まれ、町が変わり果てた景色を見つめながら泣いているおばあさんの姿。
「でも辛い記憶も記録として残さないとと思う。二度と繰り返さない為に もうつらい写真は撮りたくない。」
と、佐藤さんの当時の率直な思いもつづられています。
他にも、避難所となっていた小学校で行われた卒業式の集合写真や、がれきの中を進み登校する児童たちの姿、現在写真スタジオを構える商店街の原点となった『福興市』の様子など、町の姿をカメラに収め続けた佐藤さん。
中でも、特に思い入れが強いという写真があると明かしてくれました。
まだ生まれたばかりの小さな赤ちゃんの手を、お父さん、お母さん、お姉ちゃんが包み込む、家族の温かさや命の尊さを感じる1枚です。
佐藤信一さん:
俺と同じ小学校に避難してきた家族で、そのお母さんのお腹の中にまだ赤ちゃんがいて、生まれたのが2011年5月だった。7月になって仮設住宅に遊びに行くねって言ったときに撮ったのがこの写真なんですけど。やっぱり亡くなった人が多い中で、新しい命が生まれたっていうのが非常に大きな喜びでしたね。
佐藤さんの写真展には、これまで全国各地から多くの人が訪れています。
展示室には、訪れた人々からのメッセージが寄せらた、何十冊ものノートがあります。
佐藤信一さん:
『写真に残してくれてありがとう』って書いてくれた人が随分いるんですよね。そう書かれると、残して良かったのかなって、勝手に自分で慰めます。
その中でも、忘れられない一文があるといいます。
佐藤信一さん:
『今この写真ずっと見ていて、私、今すぐお家に帰りたくなりました』と書いてあって。
写真展には『(写真を見る上で)自分のふるさとに置き換えて見てください』って書いてあるんだけど、俺の写真をそう見てくれて、自分のふるさとを思い出して愛おしくなったのかもしれない。だから、このメッセージを自分なりにそう解釈したんだけどね。それがすごく印象的でした。
「写真でないと伝わらないことがある」これからも撮り続ける理由
佐藤信一さん:
今、残っている写真を見て、当時のことを思い出すと同時に、撮っていて良かったのかなとは思う。何もないと伝えるものがない。口だけでは伝わらないから…。だから、(写真を撮ったことは)間違いではなかったのかな。
どこかで区切りをつけないといけない。俺が死んでも写真は残るだろう。そういう残せるものを、残すことができたっていうことからすれば、良かったのかもしれない。
自身も被災者でありながら、ふるさとの姿や町の人々を撮り続けてきた佐藤さん。
15年撮り続けてきたから分かったこと、そして、これからも撮り続ける理由とは…
佐藤信一さん:
写真って結局、ありのままの真実を写すわけで、写真でないと人に伝わらないことが必ずある。さらにその写真に1つ2つ言葉を添えてあげると、より人の心に伝わるんだというのは、この15年でよく分かったかな。
だから、自分の写真を飾ることに重きを置いて、自分の写真で説明したいと思ったし、撮れるうちは撮っていこうかなと思います。
できれば人の喜びのほうがいいけどね。
