ミラノ・コルティナ五輪、スキージャンプ・女子ノーマルヒルで、丸山希選手(27)が見事、銅メダルを獲得しました。

五輪初出場、遅咲きのニューヒロインとして、一躍、世界から注目される存在となった丸山選手。しかし、その道のりは決して平坦なものではありませんでした。

小さくても“負けず嫌い” 波瀾万丈な選手人生

丸山選手が、スキージャンプを本格的に始めたのは、小学4年生のとき。

当時、丸山選手を指導していた野沢温泉スキークラブの笹岡洋介さんは、そのときの様子をこう話します。

野沢温泉スキークラブ 笹岡洋介さん:
昔、希は本当に小さかったので、ご飯が食べられないんですよね。本当に最後の最後まで残って、それこそ泣きそうなくらいまで残ってご飯食べていて。本当、昔は食が細かったです。
当時はもう男女関係なく、男子に負けても「悔しい」って口にしていましたので、昔から負けず嫌いです。

体は小さくても、“負けず嫌い”だったという、少女時代。
努力を積み重ねて、同世代の髙梨沙羅選手や伊藤有希選手らとともに、世界の舞台で戦うまでに成長していきました。

そして2022年には、北京五輪の代表有力候補まで上り詰めましたが、五輪直前の大会で着地に失敗。左膝前十字靭帯断裂の大けがをして、代表入りは絶望的となってしまいました。

しかし…、丸山選手はそこで折れることはありませんでした。
悔しさをバネに、日々の努力を惜しまず、今シーズンは、ワールドカップで6勝をあげるなど大躍進。初めての五輪代表に選ばれるまでに返り咲いたのです。

1月に行われたインタビューでも…。

丸山希選手:
飛距離を出せたときの恐怖心が、けがをした後からあったんですけど、それがだんだん今シーズンなくなっていった。

大けがを乗り越え、夢の舞台で手にした銅メダル。
丸山選手は、今後行われる混合団体やラージヒルに出場予定。さらなるメダル獲得の可能性はあるのでしょうか?

『サン!シャイン』は、スキージャンプ界のレジェンド・葛西紀明選手に、丸山選手の強さの秘密と、今後のメダル予想を聞きました。

レジェンド語る丸山選手の“すごさ”「精神力と空中姿勢」

――丸山選手の銅メダル獲得をどうご覧になりましたか?
葛西紀明選手:

金も見えていたので、惜しかったなというのと、初めてのメダルなので僕も喜びました。けがが本当に…すごく悔しい思いをしていたと思うので、五輪にかける気持ちはすごかったと思います。

丸山選手が五輪を目指すきっかけとなったのは、2014年ソチ五輪での葛西選手の銀メダル。その姿を見て、「あの輝かしい舞台を自分も目指したい」と、心に決めたといいます。

葛西紀明選手:
いや、そんな気持ちでいたなんて、僕は全く分からなかったので、1mmも思わなかったので、ハハハ。(これまで丸山選手とは)全く絡みもなかったのですが、本当にキラキラしていたと僕のことを言っていたので、「そんな感じで見ていたんだ」とうれしく思いました。

葛西選手から見た、丸山選手のすごさは大きく二つあるといいます。一つは「恐怖に打ち勝つ精神力」、もう一つは「空中姿勢の良さ」だといいます。

――「精神力」というのはどういった部分なのでしょうか?
葛西紀明選手:

4年前にけがをして、膝のけがだったんですが。多分、着地でけがをしたので、テレマーク姿勢や着地をするのがすごく怖いんですよね。
私も2回鎖骨を折るけがをしたことがあるのですが、(メンタルが)復活するまで10年くらいかかったので、それを4年でパンと。
(けがをしたときの)恐怖心が根付いてしまって、ずっと怖かったんですけど。丸山さんは4年で克服して、メダルにつながった。この精神力がすごいと思います。
多分、何百本も飛んで、恐怖心を少しずつ取り除いたのではないかと。

――「空中姿勢の良さ」とは?
葛西紀明選手:

ふところの深い前傾姿勢というか、多分、伸びてしまうと内側に風がたまらないので、少し丸い感じの、飛行機の翼のような形が一番風を受けやすいのでそのタメと、あとはV字の広さですね。股が大分広く姿勢を取れているので、(足の付け根に)風が当たりやすいんです。そこが一番すごいところなのではないかな?

――葛西選手の影響もある?
いや~、まねしてくれていたらうれしいですね。

けがを克服した後、みるみる成績を上げていった丸山選手ですが、けがをする前と後で大きく変わった点があります。それが、「足の裏」です。

ジャンプする踏切の瞬間に、足の裏のどこに力を入れているかを示した画像を見ると、2018年は爪先に力を入れて少し前のめりになってしまう形だったのが、2025年は足裏全体で蹴ることで、姿勢が低くなり、スピードが出るようになったそうです。

足裏全体に力を入れることで、姿勢が低くなりスピードが出る

――葛西さんも足裏全体で飛ぶことを意識しているのですか?
葛西紀明選手:

僕も意識しています。太ももの筋肉を使う感じですね。膝も動かないように。膝は固定して足の裏全体で押して太ももの筋肉を使うと。

丸山選手は、足の裏全体に体重をのせる練習をするために、不安定なブランコの上に乗ってジャンプ姿勢を取るというトレーニングを行っているといいます。

葛西紀明選手:
これは、北野チーム(北野建設)のコーチが編み出して、ブランコのトレーニングを取り入れているんです。ほとんど丸山さんだけのトレーニングというか、北野チーム(独自)のトレーニングだと思います。

――葛西さんはやったことは?
僕は怖くてできなかったです。

「ガチでいいですか?」今後のメダル予想

まだまだ、期待の種目が続いていくジャンプ競技。

9日深夜には、北京五輪金メダリストの小林陵侑選手と、二階堂蓮選手が出場する、「男子ノーマルヒル」。
10日深夜に「混合団体」、14日深夜に「男子ラージヒル」、15日深夜に「女子ラージヒル」、16日深夜は「男子スーパーチーム(※)」と続いていきます。
(※スーパーチーム:これまで各国4人のチーム戦が、トップ選手2人のチーム戦になった)

――今後、ジャンプ競技はどのくらいのメダルを期待していいですか?
葛西紀明選手:

ガチで言っていいですか?(それぞれの種目)一個ずつ取れるかなという期待をしているのですが、四つですね。「男子スーパーチーム」は、なかなか難しい…と思います。

谷原章介キャスター:
葛西さんが次の五輪を目指すという言葉を聞いて、同い年の僕らはすごく勇気をもらったんですよ。本当に挑戦してくださいますよね!

葛西紀明選手:
僕もその言葉で頑張れます!

(『サン!シャイン』 2026年2月9日放送より)