今年、最注目の俳優のひとり、吉田美月喜さんが、映画主演作を振り返りました。
吉田美月喜さんが、常盤貴子さんとともに主演を務める映画「あつい胸さわぎ」(1月27日公開)は、“若年性乳がん”と“恋愛”をテーマに、揺れ動く母娘の思いを繊細かつユーモラスに描き出すヒューマンドラマ。
吉田さんは、初期乳がんが判明する大学一年生の千夏役。
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常盤さんが母親を演じ、千夏が密かに思いを寄せる光輝を奥平大兼さん、千夏の憧れの人でありながら対峙することになるトコちゃんを前田敦子さんが演じます。
第35回「東京国際映画祭」の「Nippon Cinema Now」部門に正式出品された話題作で、存在感を見せた吉田さんに話を聞きました。
「乳がんになった人の気持ちは、実際に自分がなってみないと、わからない」
<吉田美月喜 インタビュー>
――映画主演作ですが、役を射止めたときはいかがでしたか?
オーディションというと、基本はその作品から一部を抜粋したものを演じて、少し自分のことを話すという感じだと思うんですけど、この作品では、まつむらしんご監督がずっと私の話を聞いてくださいました。
家族とはどんな関係で、どんな風に育ってきたのかを詳しく聞いてくださって、それがなんだかすごくうれしくて。
でも、オーディションが終わったあとに、私抜きで、監督とマネージャーさんが30分くらい別室で話していたんです。何を話されているんだろう…とドキドキしながら待っていて、監督が帰られるというのでご挨拶に行ったら、「ちょっと座ってください」と言われて。
「まだ、オーディションがあるの?」と思ったら、その場で「千夏、よろしくお願いします」と言ってくださったんです。
突然のことで、頭が真っ白になって、家に帰っても母に「なんか決まったらしい…」みたいな報告になってしまいました(笑)。
――千夏は、ごく普通の大学一年生だったのに、乳がんが判明し困惑します。演じるうえで心がけたことはありますか?
オーディション前に初稿を読ませていただいたときから、乳がんになるという設定に、少し重く暗いイメージはありつつも、どこかあたたかい感じがするのが印象的でした。
監督も、乳がんの要素はあるけど、それだけではなく、母子関係だったり、初恋の甘酸っぱい部分だったりと、ひとりの女の子の人生を描きたいとおっしゃっていて。
それは脚本を読んだなかでも感じたことで、理解できる部分でした。
乳がんになった人の気持ちは、いくら共感しようとしても実際に自分がなってみないと、わからないものですので、ほぼ知識がない状態で告知された千夏のように、私も、とまどったり、困惑したりするその気持ちを大切にしようと思って演じました。
病気についていろいろ調べたり、勉強したりはしましたが、千夏が持つどの悩みに対しても、同じような熱量で演じたように思います。
――親に干渉されるとテンションが下がる世代、というセリフがありました。千夏に共感できるところはありますか?
千夏は18歳で、当時の私も18歳で高校を卒業して大人になったと思っていたけれど、やっぱり親に頼らなければ何もできない、子どもっぽい浮ついたようなところは、すごく共感できる部分でしたし、演じるうえで、ずっと大切にしていたところでもあります。
「吉田美月喜がいるから安心だよね」と言っていただけるような俳優に
――印象に残っているシーン、苦労したシーンなどあれば教えてください。
千夏が、お母さん(常盤貴子)と、トコちゃん(前田敦子)とそれぞれぶつかり合うシーンは、すごく印象に残っています。それぞれ一対一で向き合うシーンですが、肉親であるお母さんと、ライバルかもしれないトコちゃんとのぶつかり合いは、「同じようにやってはいけない」という思いが強く、どういうふうに分けたらいいか、考えながら現場に入りました。
常盤さんとのシーンでは、千夏を演じる自分のなかでお母さんに対する“甘え”のような気持ちが出てきて、少し驚いたんです。ずっと母娘で生きてきて、お互いが大好きなふたりだから、「この人は絶対に私を捨てない(から大丈夫)」というような甘えを感じて。その気持ちを大事に演じました。
前田さんとのシーンは、“女”としてのぶつかり合いではあっても、尊敬しているし、大好きなトコちゃんということで難しかったですけど、前田さんはどんなお芝居でも受け止めてくださるので、演じていてすごく楽しかったですし、新しい発見もあったシーンとなりました。
――関西弁でのお芝居はいかがでしたか?
今まで、何度か関西弁の役をやったことがあったのですが、監督やスタッフの方が“私が持っている関西弁”だけでやっていけるようにしてくださっていたのと、あとは現場で常盤さんにもうかがっていました。「その言い方ちゃうよ」なんて、たくさん教えてくださいました。
――常盤さんとの母娘のシーンは、本物の親子のような自然な感じがありました。雰囲気も似ているように感じましたが、いかがでしたか?
本当ですか!?それはすごくうれしいです。
常盤さんとは、衣裳合わせで少しお会いしただけで、ちゃんとお話ししたのは現場に入ってからだったんですが、初日から“関西のおかん”といった雰囲気を出してくださっていたので、私も娘としてスッと入ることができました。
あとは、関西弁もそうですし、とにかく現場でいろいろと面倒を見てくださいました。お芝居でも、言葉や行動で伝えてくださる役者さんでしたので、どんなシーンでも実際の親子のように、すごく自然に演じることができました。
――本作を皮切りに、その後も主演作が続きます。自身が思う、アピールポイント、強味があれば教えてください。
そこは自分でも探しているところですが、オーディションで「目力があるね」と言ってもらえることがあるので、そこは自分のひとつの武器になるのかな、と思ってはいます。
現場にいることが楽しくてすごく好きで、そこから影響を受けることが多いので、ひとつでも多く現場を経験できるように、オーディションを頑張っています。
――プロフィールを見ると、バレエ、テニス、バスケットボールなど、スポーツも得意なようですね。
スポーツは、ちょっと体験したら普通より早くできるようになれることもあるので、そこは役を演じるうえでも強味にできたらいいな、と思っています。
私がやりたいと言った習い事をやらせてくれた母のためにも、そういった経験が無駄にならないようにしなきゃ、とも思いますし、そこは感謝している部分です。
ただ、最近は、コロナの影響もあって運動する機会が減っているんです。高校を卒業して部活動をすることもないので、体力の低下を感じていて…。そろそろ、何か始めなきゃ、と思っているところです。
――プライベートでハマっていることがあれば教えてください。
普段は、散歩が好きなので、自宅の近辺を歩いたり、たまに走ったり、うろうろしています(笑)。たまに渋谷なんかに行って、人間観察するのも好きですね。カフェやショッピングモールで、店員さんとお客さんのやりとりを見たり、聞こえてくる何気ない会話を聞いたりして「へぇ~」と思ったりするのが面白くて。
友だちとショッピングに行くのも好きですけど、たまにそうやってひとりでのんびりする時間も大切にしています。
――最後に2023年の抱負を教えてください。
「メイヘムガールズ」(22年11月公開)、「あつい胸さわぎ」、「カムイのうた」(今秋公開予定)と(主演を)やらせていただきましたが、どの現場でも支えてもらってばかりで、主演らしいことができていなかったので、今年中に、ということではないですが、今年から少しずつでも、「吉田美月喜がいるから安心だよね」と言っていただけるような俳優になることが目標です。
今回も常盤さん、前田さんとご一緒して、勉強させていただいたので、そういったものを少しずつ出していけたらいいな、と思っています。
プライベートでは、3月に20歳になるので、これは以前から夢だったんですが、初めてのお酒を母と飲めたらいいなって。すごく楽しみにしています。
<映画「あつい胸さわぎ」概要>
ストーリー
港町の古い一軒家に暮らす武藤千夏(吉田美月喜)と、母の昭子(常盤貴子)は、慎ましくも笑いの絶えない日々を過ごしていた。
芸大生の千夏は、創作課題「初恋の思い出」に頭を悩ませている。千夏にとって初恋は、忘れられない一言のせいで苦い思い出になっていた。しかし、初恋の相手である川柳光輝(奥平大兼)と再会した千夏は、再び自分の胸が踊り出すのを感じる。
一方、母の昭子も、職場に赴任してきた木村基晴(三浦誠己)の不器用だけど屈託のない人柄に興味を惹かれはじめており、20年ぶりにやってきたトキメキを同僚の花内透子(前田敦子)にからかわれていた。
親子ふたりして恋がはじまる予感に浮き足立つ毎日。
そんなある日、昭子は千夏の部屋で“乳がん検診の再検査”の通知を見つけてしまう。
監督:まつむらしんご
原作:横山拓也
脚本:髙橋泉
出演:吉田美月喜、常盤貴子、奥平大兼、前田敦子、三浦誠己、佐藤緋美、石原理衣ほか
映画「あつい胸さわぎ」は、1月27日(金)新宿武蔵野館・イオンシネマにて全国ロードショー。
最新情報は、映画「あつい胸さわぎ」公式サイトまで。