<橋本愛、瀬戸康史、比嘉愛未 コメント>
――ドラマ『にこたま』という作品について
橋本:あっちゃん(温子/橋本)は、10年以上一緒にいるパートナーの晃平(瀬戸)に裏切られてしまうわけなんですけど、第1話は晃平と高野(比嘉)さんの視点が多いので、あっちゃんはわりと平和に幸せに過ごしているのかなと。
でも、この先どんどん追い詰められていくあっちゃんの選択や晃平との関係性、そして、高野さんが選ぶ道もすごくリアルで、年齢的にもわりと切実な問題というか、現実が描かれているなと思います。
あっちゃんは、恋愛感情が人より薄くて、そもそも恋ってなんだろうとか。「私は晃平を愛しているのかな」と思うような人なんですけど、そういう複雑な感情を渡辺ペコ先生独自の切り口で描いている作品です。
――それぞれの役どころについて教えてください。
瀬戸:(10年来のパートナーを裏切る役とあって、開口一番)申し訳ございません!でも、あれは役柄なので。今の僕は、瀬戸康史なんで(笑)。晃平は起こしてしまった事実に対して、彼なりに向き合おうとするんですよね。そこは彼のいいところなのかなと。このあと、あっちゃんの信頼を取り戻せるのか。高野さんとはどう決着をつけるのか。面白いドラマになっていると思います。
比嘉:高野は、とても感情が読み取りにくい人。冷静で、常に凛としていて自立した女性というイメージがあるんですけど、晃平とこんな形になってしまって…。“なってしまう”というのは、ちょっと違うのかな。彼女としては、自分で選択をした結果。
倫理的にどうかという部分もありますが、彼女はその選択を相手に押しつけない。1人で背負って生きていくという覚悟を持った強い女性だなと。演じていて学ぶことが多くありましたし、彼女がどういう答えを出すのか。ぜひ注目していただきたいです。
――原作者・渡辺ペコさんの作品への思いを聞いて
橋本:先生がこの漫画を描いたのは、10年以上前。当時は、今よりも多様性が可視化されていない状態だったと思うんです。恋愛するのが当たり前とか、幸せな家族像とかを共通認識として持っていた時代だったのかなと。そのなかで、先生がこの作品を描いたところが本当に恐ろしいし、先見の明があるなと感じました。
その一方で、今この作品をドラマ化する意味というのも、同時に考えなければいけないなと思いました。原作とドラマで少し表現が変わっているところもありますが、そこは制作チームのみんなと一生懸命考えながら作っていきました。
――印象に残っているセリフはありますか?
橋本:
第1話より「あっちゃんは、冷めてるもんねー」
なんてことない一言だってわかっているのに、妙にざらっと残ってしまうのはなぜでしょう。あっちゃんの今まで生きてきた道が詰まっているセリフだなと思いました。しかも、これ親友に言われるんですよね。これまで「冷めてる」と言われすぎて冷たい人間なんじゃないかとか、違和感とともに生きてきた人なんだろうなと思ったし、「ショックだった」じゃなくて「ざらっと残る」というのも絶妙な表現。あっちゃんの強さも感じました。
瀬戸:
第2話より「明日にも、俺かあっちゃん死んじゃうかもしれないんだよ。言いたいことは言えるうちに言っとかないと。」
ストレートだからこそ伝わるし、当たり前だからこそ忘れがちなこともあるなと思いました。
比嘉:
第4話より「この期におよんでわたし、まだあの人に期待してるんだ…」
心の声がぽろっと出てしまった高野のセリフですけど、私、これ言ったことあるなって。リアルな言葉すぎて共感しかなかったです。親子でもわかり合えないもどかしさみたいなものが全面に出ているなと思いました。
――本作の大事な要素に「食」があります。
橋本:第2~3話にかけて、うどんが出てきます。ネタバレになっちゃうんですけど、せっかく作ったのに、晃平が食べてくれないんですよ。だから、撮影後に私がおいしくいただきました(笑)。
瀬戸:その分、卵の肉巻きは10個くらい食べましたよ?「監督、おなかいっぱいです」って言いながら!
比嘉:高野がポテトフライをやけ食いするんですけど、彼女の心情がすごく出ていて。監督が「もっと早く食べて」と言うから大変だったんです。クールに淡々とポテトフライを素早く食べるという、高度な技術を得ました(笑)。
――くるりが歌う、主題歌『oh my baby』について
橋本:くるりさんの曲がもともと大好きなので、作品に寄り添いつつも、くるりさんらしい世界観で包んでくれたのがうれしかったです。
瀬戸:ずっと申し訳ないという気持ちで本編を見ていたんですけど、主題歌のこの曲に救われました。ホッとした気持ちになりました。
――(瀬戸さんから比嘉さんへの質問)明るさ、ポジティブさの秘訣は?
瀬戸:晃平くらい、シンプルな質問になっちゃった(笑)。
比嘉:私もシンプルですよ。人生一度きり。今体験できることを思いきり楽しもうという精神で生きているだけですから。大変なことも学びとか感謝に変えたいなって。でも、それができるようになってきたのは、最近ですね。この人生が終わるときに、自分がどれくらい成長できているかなと、自分で実験している感覚。だから、楽しめているんだと思います。
瀬戸:撮影中、比嘉さんがちょっと落ち込んでいたときがあったんですけど、沖縄出身だからとHYさんの曲をかけていたことがありましたよね。
比嘉:おセンチになったときね(笑)。瀬戸さん、やさしいんですよ。そのときも、一緒に歌い始めて。しかも、私が歌うとハモってくれるんです。
瀬戸:特殊なコミュニケーションでしたよね(笑)。
橋本:私も、比嘉さんには、明るいイメージがあります。撮影ではあまりご一緒できなかったんですけど、そのなかでも「占いで、オーラが子どもだったと言われた」とお話されていて。すごく面白い人だなって。
比嘉:なんかえらそうなこと言っちゃいましたけど、ただの子どもでした(笑)。
――(瀬戸さんから橋本さんへの質問)台本には、どんなことを書き込んでいるのか?
瀬戸:盗み見したわけじゃなくて、見えちゃったんですけど、いろいろ読めないくらい書き込んでいますよね。
橋本:メイク中とかに「また呪文書いているんですか」と言われるくらい、いろいろ書いちゃってますね(笑)。あれは、演じる役の心情です。サブテキストというか、ここは何を考えているのかなとか。1行ずつ書いていくので、めちゃくちゃ疲れるんですけど(笑)。それをやらないと演じられないので、毎回やっています。
――(瀬戸さんから橋本さんへの質問)撮影の合間に、おもしろ動画を見て爆笑している姿を見かけるが、どの現場でもそうなのか?
瀬戸:台本に、バーッと書いてたと思ったら次の瞬間「あははは!:ってギャップがすごい。
橋本:ちょっと、やばいやつじゃないですか(笑)。おもしろ動画は、リフレッシュです。自分へのご褒美として、何も考えずに笑う時間を作っています。
――(スタッフからのタレコミで)急こう配な坂道を自転車で下るシーン。橋本さんはカットがかかると全速力で自転車に乗って再び坂の上に。しかも3回も!について
橋本:自転車、好きなんです。ずっと乗っていたくて。誰にも取られたくない気持ちでした(笑)。
――視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
比嘉:自信作だと声を大にして言える作品ができあがりました。みんな不器用で、一生懸命生きている人たちばかり。いい悪いではなく、それぞれの生き方や奮闘している姿を見て、少しでも生きるヒントや勇気を受け取ってもらえたらうれしいです。
瀬戸:大切だと思った人は、大切にしましょう!よろしくお願いします。
橋本:私自身、渡辺ペコ先生の漫画が本当に大好きで、今回の実写化で夢がかなったところもあります。あっちゃんの選択は、それが最善だとか、一番幸せというものではなく、彼女と晃平にとって覚悟を持って選んだひとつの道。
家族って授かりものなところもあると思いますけど、自分で選べるものでもあるんだなと。いろんな選択をこのドラマを通して学ばせてもらいました。
あっちゃんたちの選択が自分の考えと沿わないものであっても、どこか自分の人生や選択を考え直すきっかけになるんじゃないかなという思いもありますので、ぜひ3人の行く末を見守ってもらえたらと思います。
