10月11日(火)25時25分から始まる連続ドラマ『アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班』。
このドラマは、男女の愛憎劇をめぐって実際に起きたミステリー事件を「もし、今の日本で起きたら?」という視点で映像化したもの。
全米が震撼した事件をドラマ化!夏子「生半可な気持ちでは負けてしまう」
今年3月に単発番組(※関東ローカル)として放送されると、放送後1週間の見逃し配信で再生数20万回を突破。それを受けて今回の連続ドラマ化とあって、スタート前から期待を寄せている人も多いのではないだろうか。
物語の舞台となるのは、男女の愛憎事件を専門に取り扱う「警視庁心理分析捜査班」、通称“アイゾウ課”。この部署にただ一人だけ所属する刑事・安座間霧子(夏子)を中心に、捜査一課のベテラン刑事・久世麟太郞(津田寛治)と新米刑事・三好慧(水石亜飛夢)が彼女をサポート。複雑怪奇な“愛憎”事件の真相を追求していく。
実話をもとにしたリアリティが恐怖を呼ぶストーリー
第1話「秘密の恋(前編)」のゲストは、波岡一喜と秋元才加。ともに演技力に定評があり、ジャンルを問わずさまざまなドラマで確かな芝居を披露してくれる実力派俳優とあって、その動きや表情を追うだけでも見応えがある。
ある日、黒田壮太(波岡)の妻・花奈が自宅で何者かに殺されるという事件が発生。容疑者として壮太と不倫関係にあった魚益清香(秋元)が浮かび上がってくる。
彼女はなんと花奈の葬儀に突然現れ、参列者の見ている前で壮太にいきなりキスをするという、常識では考えられない行動を取っただけでなく、満面の笑顔で「私たち、結婚するんです!」と宣言。誰もが彼女の犯行を疑うのは間違いのないところだった。
しかし、事件当日、清香にはアリバイがあった。では、黒田の妻を殺したのはいったい誰なのか…?
なにより背筋が凍るのは、このドラマが実際に起きた事件をモチーフにしているという点だ。
それは1989年にアメリカで起きた「キャロライン・ウォーマス事件」。
ある日、小学校教師ポール・ソロモンは、自宅で妻・ベティの遺体を発見する。容疑者として浮上したのは、ポールの不倫相手であるキャロライン・ウォーマス。壮絶な男女の愛憎事件は、当時全米に衝撃を与えた。25歳のキャロラインが異常なストーカー行為に走る背景には、想像を絶する過去があったという。
さらに恐怖を感じさせるのが、事件の真相とともに明らかになっていく清香の本性だ。
清香を演じる秋元は、現在放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)で、かつて木曽義仲の愛妾で今は和田義盛の側女である気丈な女性・巴御前役で出演しているが、本作ではそれとはまた違ったキャラクターを見事に演じている。
安座間の追及にもまったく悪びれることなく受け答え、自分は清廉潔白であるかのように振る舞う清香。その一方で、花奈がいなくなったことで歯止めが効かなくなり、どんどんエスカレートしていく壮太への思い。ついには勝手に黒田家に上がり込み、一人娘・つむぎの誕生日を祝うのである。
すべては愛する壮太のため――。彼女の笑顔から垣間見える“狂気”に、戦慄を覚えるのは私だけではないだろう。
確かな演技でドラマを支える俳優陣
夏子演じる主人公の安座間は、卓越した観察眼と洞察力で対象者が隠している事実を暴き出し、事件の真相へと鋭く迫っていく。
なぜ、彼女はそのような特殊技能を身につけているのか。
安座間は過去に警視正の村瀬をストーキングしており、それが原因で今の部署に左遷させられたのだ。ここからは想像だが、それゆえに犯人の気持ちや行動が理解でき、事件解決の糸口を見いだすことが可能となるのではないだろうか。
毒をもって毒を制す、ではないが、まさに諸刃の剣とも言える彼女の存在に、視聴者はより一層スリリングな展開を楽しむことができる。ストーリーが進むにつれ、ポテンシャルを大いに秘めた夏子の演技とともに、安座間が自らの愛憎と向き合い、激しく葛藤する場面もぜひ見てみたい。
そして、安座間が執着した村瀬警視正がどんな人物なのか、もし本編に登場するのなら誰が彼を演じるのかも非常に気になるところだ。連続ドラマということで、安座間自身の愛憎が描かれる展開にも期待したい。
新米刑事の三好を演じる水石は、映画「鋼の錬金術師」シリーズのアルフォンス・エルリックや、スーパー戦隊シリーズ『魔進戦隊キラメイジャー』(テレビ朝日)のキラメイブルーとして活躍してきた、今後が非常に楽しみな若手俳優の一人。安座間と久世に挟まれながらも懸命に事件を追う役どころを違和感なく上手に演じている。
そんな若い二人を支えるベテラン・津田寛治の演技も随所に光る。今から20年ほど前に缶コーヒーのCMでブレイクし、今やさまざまなドラマで引っ張りだこの彼だが、年齢を重ねるごとに渋みが増し、刑事役が実によく似合う。どこか人を食ったとぼけた味を醸し出しながらも、ドラマの空気をしっかりと引き締める彼の貴重な存在感にも注目である。
「愛」と「憎」。一見、相反しているようで、根底ではつながっているとも言えるこの二つの感情が、いつの時代もさまざまな事件を引き起こしてきた。文字通り、生身の人間同士が繰り広げる愛憎が複雑に絡み合うドラマ『アイゾウ』。この秋は眠れなくなる夜が続きそうだ。
文:中村裕一
火曜ACTION!『アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班』は、10月11日(火)25時25分~スタート!毎週火曜24時25分より、フジテレビで放送されます。