――稽古場では「トー横」についての講習会やディスカッションを通じて、物語や役についての解釈を深めている最中だそう。演じる役どころについて、現時点ではどう捉えていますか?
宮﨑:本郷はもともと前向きでポジティブな人間だったんだと思います。でも過去の仕事での経験がきっかけで、時間に取り残されているというか、前に進めなくなってしまっている。今は興信所の調査員としてちゃんと仕事をしてはいるけど、感覚的にはその日暮らしのような、何に熱を入れるでもなく生きている男、という印象ですね。
朝海:私が演じる母親については、彼女なりに本当に一生懸命生きているんだな、ということはすごく感じています。悲劇的なことに、娘と心を通わせることはできていないんですが、だからといって母親が悪いかというとそうでもなくて。
家族を想っているからこそ、生活のこと、経済的なことを意識しすぎてしまって、結果的に家族の優先順位が下がっていたというか。そういうジレンマが彼女のなかでぐるぐる回っていて、葛藤を抱えながらも一日一日を懸命に生きていたんだろうなと思います。
――子どもだから未熟で、大人だから成熟している、と線引きできるものではなく。
朝海:誰でもみんな、何歳であろうと未熟な心を持っている、心に何かを抱えている、その象徴としての『Too Young』というタイトルなのではないか、というのが私なりの解釈です。ほかの登場人物もそうですし、この現代で生きていらっしゃる方々それぞれ、そういう面はお持ちなんじゃないかなと思います。
宮﨑:「大人」ってそれこそなんだ?と。僕は今35歳ですけど、自分を大人だとは思わないですし、でも子どもは子どもだなって思うんですよ。10代20代の子を見ていたら、「若いな~」とか「まだ子どもだからな~」とか思ったりします。
だからといって、子どもではないことがイコール大人かというと、そういうわけでもないじゃないですか。それはきっと本郷にとっても見つかっていないところなんだろうなと。……大人ってなんですかね?
朝海:ね。大人って、なんだろうねえ。
宮﨑:自立していれば大人、なんて簡単なことでもないだろうし。よくわかんないですね(笑)。
宮﨑秋人 デビュー15年まだまだ模索「新しい台本をいただくたびに…」
――宮﨑さんはデビューから約15年、確たる手応えのようなものは?
宮﨑:全然ないですよ(笑)。いまだに何にもわかんないなって思います。新しい台本をいただくたびに「台本ってどうやって覚えればいいんだよ」って思ってますし。もうちょっと自分なりのやり方みたいなものが見つかるのかなって思っていたんですけど、まだまだわからないっていうのが現状ですね。
――ただ、本作ではこれまでとは少し違ったアプローチをしていると聞きました。
宮﨑:実は今回、稽古に入る少し前に日澤さんにお時間をいただいたんです。ここの台詞の意図を捉えきれていないとか、この台詞は少し言いすぎているように感じるとか、細かい部分を全部洗い出して相談させてもらいました。
もともとは「脚本に書かれたものは一字一句やる」というスタンスだったので、そういう意味では作品や役に対しての向き合い方が少し変わってきたのかなと思います。
でも、何歳になってもこのままなんだろうな、毎回「台本ってどうやって覚えるんだっけ」と思いながら歳を重ねていくんだろうな、段々覚えにくくなっていくんだろうな、って思います(笑)。
――朝海さんも、宝塚歌劇団を経て現在までトップランナーとして活躍を続けています。自身のなかで「役者として一人前になれた」と感じた出来事はありますか?
朝海:いや、ないですね。
宮﨑:ないんですか(笑)。
朝海:ないですね…。毎回「これじゃあダメ」って思っています。何もうまくなっていないし、何もよくなっていないし、自分の姿を見るのも本当は嫌なんですよ。
宮﨑:ええ~⁉
朝海:自分が出ている映像を見て勉強しなきゃいけないっていうことはわかってるんです。でもダメなところを直視したくないから手で顔を覆いながら見て、「あんな出来なら、もう人前に出たくない」って思っちゃう。もちろん舞台の上ではそんなこと考えていないですけど、ステージから降りたら、ただただ反省の毎日です。
