宝塚歌劇団の元スターに、輝く秘訣やこだわりを語ってもらう「宝塚OG劇場」。第8回は、朝海ひかる(あさみ・ひかる)が登場。
透明感ある爽やかな雰囲気とダンスの実力を持つ雪組男役トップスターとして活躍し、2006年の退団後は舞台を中心にミュージカル・ストレートプレイ・映像などに幅広く活躍中。3月21日(月・祝)から上演される舞台「サロメ奇譚」では、主人公・サロメを演じる。
そんな朝海に、フジテレビュー!!がインタビュー。サロメ役への思いや、舞台に立つ上で宝塚時代から大切にしていることを聞いた。また、タカラジェンヌOGといえば、オシャレで個性的なファッションも魅力のひとつ。そこで本連載では、それぞれの“こだわりの一着”も紹介してもらう。
<朝海ひかる フォトギャラリー(全8枚)>
「私がやっていいの?」原作では10代の少女役に戸惑い
――出演オファーを聞いて、どんなことを思いましたか?
サロメって確か原作では10代じゃなかったかな…私がやっていいのかな、と(苦笑)。有名な作品ですが、サロメが男性の首を切ってお盆に載せているシーンしか思い出せず、そこまでのストーリーが自分の中であやふやなことに気づきました。
そこで改めて原作を読み、現代の女性ならではの感情を織り込んで演じられるなら、サロメよりちょっと人生経験の多い、私のような年齢の人間が演じることに、意味があるのかなと思ってお受けしました。
――本作は、オスカー・ワイルドの不朽の名作「サロメ」を、現代の日本に置き換えて描いた“新感覚悲喜劇”です。脚本を読んでいかがでしたか?
「こう来たか」と思いました。話の内容は重いですが、思わず笑ってしまうシーンがあったり、「あるある!」と共感する場面があったりと、とてもライトに読めました。
実は脚本が完成するまでの間、脚本家のペヤンヌマキさん、演出家の稲葉さん、プロデューサーの方と、何度か打ち合わせをしたんです。
サロメは最後に、好きな男性の首を切ってしまいます。自分の意にそぐわなかったから傲慢な行動に出た…そんな単純な話ではないと思うので、現代に生きる私たちも腑に落ちるような、心に響く落としどころを作りたいね、と話し合いました。ペヤンヌさんらしい軽さとウィットに富んだ、女性の心を揺さぶる何かが織り込まれた脚本だと感じています。
――お稽古はこれからだそうですが、サロメをどう演じたいですか?
まだ全然考えていないんです(苦笑)。舞台って、スタッフ・キャストが全員がそろって、ひとつずつ作品に色をつけていくような作業ですから、自分1人が先走っても空回りしてしまうんです。皆さんとちょっとずつ積み上げながら、舞台に昇華していきたいです。
――預言者・ヨカナーン役の牧島輝さんとは初共演ですね。
牧島くんは、ポスター撮影で初めてお会いしました。共通の知り合いについて話したりしながら、初対面でいきなり首を締めてしまいました(笑)。このポスター、皆さんから「CGでしょ?」と言われますが、本当に首を抱えさせてもらっています。牧島さんの体がうまく隠れているので、首だけのCGに見えるみたいですね。牧島さんのファンの皆様、ごめんなさい(笑)。
「あ、この人また変なことやっているな」と思ってもらえるように
――舞台に立つ上で、宝塚時代から今も大切にしていることはありますか?
「作品に誠実でありたい」ですね。この作品をどうお客様に楽しんでいただくか、より良くするためにはどうするか。自分のことより作品への思いを大事にして、毎回取り組んできたと思います。
そうするために、独りよがりな役作りはしないよう心がけています。お稽古中は皆さんと話し合って、この作品に何が必要か考え、自分の立ち位置を見つけていきます。
宝塚でトップスターを務めていたときは基本的に主役を演じるので、中心的な立場から「この作品をどう見せよう」と考えていました。宝塚退団後は、いろいろな作品に参加させていただいているので、その都度“立ち位置探し”をしています。
――宝塚を退団して約16年経ちましたが、退団直後は立ち位置を探すのに苦労しましたか?
そうですね、男役の引き出ししかなかったので(苦笑)、立ち位置もそうですが、とにかく無我夢中でしたね。演出家の方に言われることを何とか消化しようと、一生懸命でした。
宝塚で過ごした16年間で、知らず知らずのうちに自分の中に“宝塚の土台”が積み上がっていたんですよね。その土台は、すごくしっかりしていて、避けようと思っても避けられない(笑)。でも、それすらも自分の一部なのだと思えた頃から、だんだん楽になっていきました。今はごく自然体ですね。
――宝塚から得たもので、今も役立っていると感じることはありますか?
やっぱり、舞台でのマナーや在り方など基礎の部分は、すべて宝塚に教えてもらったと思います。あとは、上下関係ですね。上下関係がしっかりした環境にいたことで、先輩・後輩に対する気遣いや立ち居振る舞いなど、学べたことがたくさんありました。
――舞台に立つ日のルーティンを教えてください。
宝塚退団後からですが、楽屋に入ったらすぐお化粧をするようにしています。何があってもいいように、とりあえずお化粧をして、いつでも舞台に立てるビジュアルにしてから、ストレッチや発声練習をしていますね。
――今年、初舞台から31年目を迎えましたが、今後挑戦してみたいことを教えてください。
今年は、役者として新境地になるような作品に出演させていただく予定なので、自分の中で新しい世界を開拓できるのでは、という淡い期待があります。やっぱり、いつも同じカードを出していたら、つまらないじゃないですか。ですから「あ、この人また変なことやっているな」と思ってもらえるように、今の自分にないものを発見し、挑戦していきたいです。
――新たな朝海さんの姿を、楽しみにしています!
自分でハードル上げちゃいましたね(笑)、頑張ります!
<こだわりの一着>
すべて私物で、自分でスタイリングをしました。撮影のときは手持ちの洋服で臨むことが多いんです。だから前日はいつも、クローゼットを覗いて「これでもない、あれでもない…これはこないだ着ちゃった!」と、てんやわんやです(笑)。
「サロメ奇譚」のイメージは、真っ赤な衣装のポスタービジュアルにお任せして(笑)、今回は「こんな人が演じますよ」と、私の人となりが伝わるようなナチュラルなお洋服にしました。
ポイントはスカートです。冬は全身“まっくろくろすけ”になりがちなので、ちょっとデザイン性が強いものを選びました。「Drawer」というブランドです。もともと、こちらのお洋服が大好きなのですが、これはセールに駆け込んで買いました(笑)。
アクセントトップスは「BLAMINK」というブランドです。知り合いの方がスタッフとして働いているので、いろいろ教えてもらって、よく着ます。ちょっとかしこまったお食事会や観劇など、おしゃれをしたいときに身に付けています。
そして、靴とイヤリング、ネックレスは「CELINE」。靴は昨年買ったばかりです。履きやすくてかわいい上に、足首まであたたかいんですよ。イヤリングは、ウィンドウショッピングでたまたま見つけました。シンプルで使いやすいので、ネックレスとともに出番が多いです。一度気に入るとずっと使うタイプなので、これからも大切に使っていきたいですね。
<コメント&撮影メイキング動画もチェック!>
<舞台「サロメ奇譚」概要>
【東京公演】3月21日(月・祝)〜31日(木)/東京芸術劇場シアターイースト
【大阪公演】4月9日(土)〜10日(日)/梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
出演:朝海ひかる、松永玲子(ナイロン100℃)、牧島輝、ベンガル、東谷英人(DULL-COLORED POP)、伊藤壮太郎、萩原亮介
最新情報は、舞台「サロメ奇譚」公式サイトまで。
撮影:河井彩美