──アクション以外の部分で、デビュー当時から変化、成長したことはありますか?
一つ大きなことで言うと、人前、特にカメラ前に立つとガチガチに緊張してしまうところがあったのですが、それをなんとか乗り越えてきました。デビュー当時よりは、1テイク目から思い切りよくお芝居ができるようになっていると思います。
緊張する環境に身を置くことで慣れてきたのかもしれません。カメラ前でも自分らしくいる方法みたいなものは見つけられたかなと思っていて。だんだんお芝居がしやすくなってきているので、いい変化だなと感じています。
あとは、アクションのお話とかぶりますが、カメラの向きや画角も含めて、どうすればお芝居を効果的に見せられるか、俯瞰で見ることは心がけています。役に集中することと、全体を俯瞰で見ること、その両方をデビュー当時よりはバランスよくできるようになってきたと思います。
一ノ瀬颯 2作品で共演した佐藤浩市の“すごさ”語る「背中を追いたい大先輩」
──その変化は、これまで出演してきた作品やそこで出会った人からの影響もあるのでしょうか?
そうですね。なかでも、映画『仕掛人・藤枝梅安』とドラマ『119エマージェンシーコール』(フジテレビ)で共演した佐藤浩市さんはすごいなと思いました。サラッとしか話していなくても、監督が求める画を瞬時に理解して、そのうえで自分らしさを表現されていて。まだ全然マネはできないですが、背中を追いたい大先輩です。
──今年もあと2ヵ月。2025年はどんな1年でしたか?
今年は新しいものとの出会い、経験、成功体験が印象に残る1年だったなと思っています。
なかでも一番心に残っている成功体験は、『119エマージェンシーコール』で、長回しでお芝居を使ってもらえたことです。僕が演じた与呉心之介がメインとなる第4話の通報を受けるシーンは、声優の井上麻里奈さん、島﨑信長さんのお芝居をあらかじめ録音して、スタジオで流してもらいながら僕たちのお芝居を撮影したのですが、すごく気持ちを入れることができました。
ドラマは基本的にカットを割ったほうが見やすいところがあると思うんです。それでも、あえて長回しで撮ったまま使っていただけたことは、自分のなかでの大切な成功体験だったな、と。あの環境を作ってくださったスタッフさんにも感謝しています。
──今年は、『紅鬼物語』で初舞台も踏みました。舞台に立った感想を聞かせてください。
舞台はすごく得るものが多かったなと思います。それが今後出演する映像作品にも生きるだろうなと公演中に思いましたし、今ドラマの撮影をしていても「これ、あのときに得られたものかも」と思う瞬間があって。
例えば…生放送の『王様のブランチ』に出演することで反射神経は身についてる実感がありました。その反射神経は、僕がもともと重要視していた“思い切り”にも大事で、自分の力になっていたんです。舞台は、観客に見られているなかで大きな動きを見せることが必要だったので、より思い切りの良さが身についた気がしています。
今、僕は『絶対零度』で南方という刑事を演じていますが、彼が所属するDICTというチームは人数もいますし、引き画を撮るときに誰も動かないと見ていて飽きてしまうと思うんです。そういうときに動きやすいキャラクターは南方だと思うので、積極的に動いていて。
舞台に出演することで、以前よりも、役の気持ちと「動いたほうがいい」という都合をちゃんと自分のなかで繋げて自然と動けるようになったなと思います。
劇団☆新感線のファンも多いですし、ずっと舞台に立っている方々に混ざることに不安もありましたけど、観てくださった方からは温かい言葉をいただけて、これも一つの成功体験になりました。2025年は自信が増えた1年でしたね。
──2026年はどんな年にしたいですか?
今年の経験を生かして、もっと表現の幅を広げていきたいです。縁と運もあると思いますが、今までにやったことのない役柄が演じられたらいいですね。役柄だけではなくて、何かしら未経験のことができる現場に携われたら、それがまた一つ力になると思うので、どんどん挑戦していきたいです。
撮影:河井彩美

