――久しぶりとなる『ザ・ノンフィクション』のナレーションはいかがでしたか?

声をかけていただいて、うれしかったです。こうやってまた大好きな『ザ・ノンフィクション』に携われるというのは、めちゃめちゃうれしいことです。

今回、ミサトさんとお母さんの様子を自分なりにどういうふうに伝えたらいいのかな、と考えて収録に臨みましたが、ミサトさんが久しぶりにちゃんとしたご飯を食べられた、というシーンでは、テンションが上がってポップにいき過ぎてしまいました(苦笑)。

ただ、そうやって考えながら収録できるのも、勉強になるな、と思いました。

――きゃりーさんは、番組のファンを公言していますが、最近のお気に入り回を教えてください。

ミナミさんの婚活の回は、すごく面白かったですね。ウワサによると、その後、ミナミさんはご結婚されたとか。Twitterの情報で知りました。

あとは、先日のいしいさん家も前後編で見ました。なんか、特に最近は、紹介されるみなさんの気持ちがわかってグッとくることが多いですね。

誰かが悪いというのではなく、双方に思いがあるからぶつかったりする。どうしようもないなかでも解決に向かっていく話とか、見ていてすごく面白いなあ、と思います。

最近、『ザ・ノンフィクション』が好き過ぎて、フィクションの映画が見られなくなってきちゃっているんです(笑)。好きだし、すごく応援している番組です。

――今回番組で密着した、すれ違う母と娘はどう見ましたか?

ミサトさんの思いって、結構“あるある”な気がしました。理想と現実がかけ離れているけど、漠然と夢を持ち続けているっていうのは、今の若者たちにもすごく通じるんじゃないかなって。

「自由な娘を心配する母親」という組み合わせも、全国にたくさんあると思いました。

自分的には、ミサトさんに感情移入しながら見られる回なのかな、というのはありました。

――どのあたりに感情移入できましたか?

私は一人っ子ということもあり、両親は私を私立の高校に入れてくれたんです。たぶん、そのまま大学に行って就職して…ということを望んでいたと思うんですけど、私が高校で急にファッションに目覚めて、ぶっ飛んだ世界に行ってしまって。

そのことで母親からいろいろ言われ、家の近所では派手な格好はしない、といったルールもできて、どこかへ出かけるときは、最寄りの駅のトイレで着替えてから行っていたんです。

今思うと、あのころの自分は、結構『ザ・ノンフィクション』向きだったな、なんて思いますね(笑)。

だから、お母さんとミサトさんの距離感やぶつかり合いは、人ごとではない感じで見られました。

――ご両親との今の距離感は?

音楽活動をするようになってからは、応援してくれていて、ライブにも来てくれます。

今は、親の気持ちもわからなくはないんです。やっぱり、大切に育ててきた娘が、自分たちが思っていたのと違うレールに乗って走っていけば、親は心配になりますよね。

――同世代のミサトさんに声をかけるなら、なんと言ってあげたいですか?

振り返って、私も高校生のときは、学校にそこまで仲良くできる友だちがいるわけでもなく、居場所がないような感じがありました。

その後、原宿という街に出会って、そこで「これが仲間だ」と思える人たちに出会ってから今の道に行けたので、やっぱり「出会い(が大事)」というのはあるのかな、と思います。

――ミサトさんは葛藤したり、心が揺れ動くことも多いですね。

私もいろいろな人の意見を聞くタイプなので、人に左右されそうになるというのはわかります。

そのとき、そのときは本気でそう思っていても、一年経ってみると、真逆に思えることもあるんですよね。人間ってそういうことがあるのも面白いところだと思います。

――ほか、気になった場面、印象的だった場面といえば?

西成の佳子さんは気になりました。TikTokの動画を見て知ってはいたんですけど、佳子さんがシンガーだったということや、(活動している)公園のことなんかも知らなかったので、今回、知ることができて面白かったです。

ぜひ、佳子さんの『ザ・ノンフィクション』も見てみたいと思いました(笑)。

――今回は、「幸せとは何か?」といった究極的なテーマをも追求しています。そのあたりはどう感じましたか?

お金か、お金じゃないか、といった問題も出てきますけど、やっぱりお金があると、満足のいく生活と夢をかなえられるというのはありますよね。

そのために下積みじゃないですけど、資金を貯めながら夢に向かっていくというのがいいのかな、とは思いました。

ミサトさんは、周りの人から食品をもらったり、援助を受けたりしていて、愛されているようでした。そこは人柄なのかな、って。

あと、お母さんに対しても結局優しいですよね。あれだけ分かり合えない関係が続いたら、「もういいや」って縁を切ってしまう人もいると思うんです。

でも、お母さんにお土産を買ったり、ぶつかりながらも何度も話し合っている姿を見て、結構、グッとくるものがありました。

<ナレーションの一部を先取り紹介>