<久保田磨希 コメント>

――台本を読んだ印象は?

事故物件の話と聞いていたので、最初は怖いのかなと思っていましたが、読んでみるととても素敵な愛にあふれた台本でした。とても好きな内容なので、事故物件だけの物語だと誤解されたくない気持ちが強くあります。

ニュースで「ロンダリング」と聞くと、あまりいい印象を抱かないことが多いですが、調べてみると“再生する”という意味があることを知りました。

私は今52歳で、自分はこうだと決めつけてしまいがちですが、違う自分、新しい自分を、自分でもっと見つけていったらいいんだというのを、このドラマに関わってから強く思っています。

――久保田さん演じる、緑原小町について教えてください。

監督に、「小町は幽霊も引くほどマイペース」って言われたんですよ(笑)。ほかのみなさんがテンポのいい会話をするので、それに引っ張られないように、自分のペースをすごく守ろうとしました。

小町さんのマイペースさは、洋服にも出ています。スタッフさんと相談しながら衣装を決めましたが、私服がかなり独特で、独自の世界観を持っていて、人に合わせることをやめた感じがします。現実世界にも、この年代で服装に強いこだわりを持つ方はいらっしゃいますが、小町さんの場合は、服や持ち物に必ず動物がいて、なかでも犬が多いです(笑)。

「アマミ不動産」の制服ではオシャレがしにくいので、靴下を毎日変えているのもこだわりですね。足元が映る場面があるかはわかりませんが、映った場合はぜひ注目してもらいたいです。本当に「これ、どこで買ってきたんですか?」って聞いてしまうくらい、毎回すごいので(笑)!

30代前半はさまよっていたのか、私服が小町さんみたいになっていた時期がありました(笑)。ガチャガチャな色、奇抜な服で自分を表現したい、みたいな。自分を探している最中で、すごく無理をしていたと思います。

今は、自分を真ん中に置いて日々を過ごしているので、服が地味であろうが素材が楽なものを選ぶというふうに、自分に合ったものをまとうようになりました。小町さんが独特な服を着ている理由とは違いますが、そういった共通点はあります。

性格的なところでいうと、お節介なところだけは一緒ですが、私は本当にせっかちなので、自分と真逆だと思いながら演じています。私、いかに要領よく日々を過ごすかにかけているくらいせっかちなんです(笑)。

一方で小町さんは、社員証をかけて、携帯電話のストラップをかけて…と順を追ってやると思うので、衣装を着るときは一つひとつ真似してやるようにしています。本当は、3つ重ねて首からかけるくらいのことをしたいんですけど、小町さんのために頑張っています(笑)。

――大阪での撮影はいかがですか?

大阪で演劇人生が始まった私にとって、物語の舞台が大阪、撮影もすべて大阪というのは、すごくうれしいです。16歳から大阪の俳優養成所に通って、18歳から大阪に住んで、29歳までずっと大阪で舞台やドラマに出ていました。

なので、そのころから知っているスタッフさんもたくさんいらっしゃいます。当時は若手で頑張っていた人が、今は監督になっているなんてこともあって、まさに『ロンダリング』の西村美保監督は、ずっとニコニコして私の近くにいてくれたかわいらしい女の子でした。

プロデューサーの中村和宏さんは、お互いがかけ出しのころからの仲で。私がドラマデビューする前に、初めてのテレビ出演となったカンテレの深夜のコント番組で、当時専門学校の研修生だった中村さんとご一緒しています。

原っぱで水着にまわしをつけて相撲を取るというコントをしましたが、そのときにまわしを締めてくれたのが中村さんでした(笑)。

いいことも悪いことも、楽しいことも悔しいことも、青春の全部が大阪にあります。一番感性が豊かなときを大阪で過ごしたので、大阪での撮影が本当にうれしいです。以前、東京の連続ドラマでも関西弁のおばちゃんを演じましたが、そのときと今回とではやはり違います。そのときは“特別な1人”でしたが、今回は“日常の1人”ですね。

――共演者のみなさんの印象は?

初めてご一緒する方がほとんどですが、自分が役者として育ってきた環境と、みなさんとでは全然違うと思うんです。丈くんはもちろんアイドルですし、私はずっと脇役の役者。

なのに、本当にみんな気が合って、年齢とか関係なくすごく居心地がいいです。休憩時間も誰ひとり楽屋に戻らず、みんなで集まれるスタジオの前室でずっとしゃべっています。家族みたいな空気感があるので、このメンバーでお茶の間劇をやりたいですね(笑)。

あと、本当に感心するのが、みなさん舞台のようなセリフ量なのに、誰も台本を持ってスタジオに入らないんですよ。その腹の決め方が、本当にすごいです。

私はふらっと出て、少ししゃべって、また引っ込むので、みなさんがたくさんしゃべってる途中に間違えたらどうしようって、すごく緊張します(笑)。でも、こんなときも小町さんは緊張しないと思うので、なんとか頑張っています!

――視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。

私は、テーマが「愛」だと強く思っています。

緋山くんは、はじめは自己肯定感が低い子ですが、自分の存在意義や存在価値に気づいて、だんだんと自分を好きになっていきます。そんな緋山くんに、私は感情移入してしまうんです。大阪から俳優という夢を抱いて東京に行き、思うようにはならずにアルバイトをして…そんなところが、自分とすごく重なります。

ただ、緋山くんには、不動産会社もいいけど、役者も諦めたらあかんでってすごく言いたい(笑)!あなたの役者としての旬は今じゃないかもしれないけど、30歳、40歳になったら、花開くかもしれないって。

久保田磨希としてすごく言いたいのですが、小町さんはそれを知らないから、どうしてあげたらいいんだろうって本気で悩んでいます(笑)。

このドラマは、きっと丈くんが主演ということで、若い方がたくさん見てくれると思うんですけど、私のような50代以上の大人の方でもすごく楽しめると思います。私が台本を読んでもおもしろかったし、自分が出ていないシーンの撮影を見ていてもおもしろいので、本当に多くの方に見てもらいたいです!

左から)久保田磨希、菅井友香、藤原丈一郎、大谷亮平、橋本涼